(※写真はイメージです/PIXTA)

コロナ禍で経営状況が悪化した企業も多いなか、所得税とは異なり赤字であっても納付義務が免除されることがない消費税は、中小企業経営者や個人事業主の悩みの種のひとつです。今回は、税理士法人グランサーズの共同代表である黒瀧泰介税理士が、消費税の特例について解説します。

消費税の特例②…簡易課税制度

「簡易課税制度」を利用

消費税を払い過ぎないテクニックのひとつに、「本則課税と簡易課税の有利な方を選択する」という方法があります。

 

消費税の課税方法には、「本則(ほんそく)課税」と「簡易課税」の2つがあります。

 

大企業の場合は、「本則課税」が原則なのですが、法人で前々事業年度(個人の場合は前々年)の課税売上が5,000万円以下の場合、簡易課税を選択することができます。どちらの計算方法を採用するかは、会社の判断にゆだねられていますが、選択によっては納税額に大きな差が出ることもあります。

 

特に経費構成のうち、人件費の割合(外注費除く)が高い業種ほど、大きな差が発生しやすいです。

 

簡易課税と本則課税の違い


簡易課税とは個別の事業者の細かい状況を考慮せず、売上と業種からざっくり消費税額を計算する制度です。

 

売上にかかった消費税に、業種ごとに定められた「みなし仕入率」をかけたものを支払い(仕入れ)にかかった消費税とみなします。実際の売上にかかった消費税から、「みなし消費税」を差し引いて納税額を計算します。

 

一方、本則課税とは実際にかかった売上や経費から納付額を計算する方法です。実際に売上にかかった消費税から、実際に支払いにかかった消費税を差し引いて計算します。

 

簡易課税の「みなし仕入率」は業種によって、このように決められています。

 

[図表3]簡易課税のみなし仕入れ率
[図表3]簡易課税のみなし仕入れ率

 

税込売上高2,200万円の飲食業でシミュレーションしてみましょう。

 

[図表4]税込売上高2,200万円飲食業の場合
[図表4]税込売上高2,200万円飲食業の場合

 

飲食業のみなし仕入率:60%(第四種事業)
預り消費税額:2,200万円×10/110=200万円
仕入税額控除額(簡易課税):200万円×60%=120万円
納付消費税額=200万円-120万円=80万円

 

簡易課税を選択した場合、税込売上高が2,200万円であれば、どの飲食店でも消費税は80万円です。(本記事では、飲食業を第四種事業と仮定していますが、宅配などを実施している場合は第四種事業に該当しない場合もあります)

 

簡易課税と本則課税どちらを選べばいいのか?

 

本則課税の場合は、消費税の計算上、各事業者の支出状況が考慮されます。

 

たとえば、仕入額が990万円かかったとしましょう。

 

仕入税額控除額が、990万円×10/100=90万円
⇒ 納付消費税額:200万円–90万円=110万円

 

この場合、本則課税を選択すると、消費税を110万円納付する必要があり、簡易課税を選択すれば、納付する消費税は80万円となるため、簡易課税を選択したほうが節税効果に繋がるということになります。

 

つまり、設定されているみなし仕入率よりも、実際の仕入率が低い場合は簡易課税を選んだほうが有利で、実際の仕入率の方が高い場合は本則課税を選んだほうが有利、ということです。

 

みなし仕入れ率が高く設定されている、第1種事業である卸業と第2種事業である小売業では、簡易課税が有利になることが多いです。また、士業やコンサルタントなども人件費率が高いことから、実際の仕入率が50%以下になることが多く、簡易課税を選択するほうが有利になりやすいとされています。

 

一方で、業績が悪く赤字の場合は、実際の仕入率の方が高くなる可能性が高いので、本則課税を選択する方が消費税納税額を抑えられやすくなります

 

簡易課税適用で注意すること

 

1.簡易課税は、基準期間における課税売上高が5,000万円以下の中小企業が対象
2.簡易課税を一度適用すると、2年間は変更することができないので注意が必要

 

ご自身の業種や業態で、簡易課税と本則課税の有利な方を見極めて選択しましょう。
ケースバイケースになり、一概にはどちらが有利不利とは言えないので、判断が難しい場合には、税理士に相談してみてはどうでしょうか。

 

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