近づく米「雇用の最大化」目標達成…雇用の回復は持続。労働需給の逼迫継続から、賃金上昇圧力は当面高止まりへ

近づく米「雇用の最大化」目標達成…雇用の回復は持続。労働需給の逼迫継続から、賃金上昇圧力は当面高止まりへ
(写真はイメージです/PIXTA)

米国の労働市場は新型コロナの影響で20年春先に大幅な落ち込みを示した後、20年5月以降は回復基調が持続している一方、労働需給の逼迫を背景に賃金上昇圧力が高まっています。本記事ではニッセイ基礎研究所の窪谷浩氏が、米国労働市場の現況と今後の見通しについて解説します。※本記事は、ニッセイ基礎研究所のレポートを転載したものです。

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    労働供給…足元で回復加速の兆しも回復は緩やか

     

    一方、堅調な労働需要に比べて労働供給の回復ペースが緩やかな状況が続いている。25歳から54歳までのプライムエイジと呼ばれる働き盛りの労働参加率は20年2月の83.0%から20年4月に▲3.1%ポイント低下した後に持ち直し、22年1月が82.0%と21年9月からは4ヵ月連続で上昇しているものの、新型コロナ流行前の水準を依然として▲1%ポイント下回っている[図表7]。

     

    [図表7]プライムエイジ(25~54歳)の労働参加率(乖離幅)
    [図表7]プライムエイジ(25~54歳)の労働参加率(乖離幅)

     

    男女別にみると女性は76.0%と21年9月の75.3%から4ヵ月連続で上昇しており、回復加速の兆しがみられる。これは、9月以降の学校再開に伴い子育て世代の女性の労働市場への再参入が増加した可能性が考えられる。もっとも、男性が88.2%と21年6月以降は概ね横這いとなっており、回復がもたついている。

     

    これまで労働参加率の回復が遅れている要因として、新型コロナの罹患や罹患者の看護、新型コロナに罹患することへの懸念に加え、新型コロナ対策の暫定措置として手厚くなった失業保険の影響などが指摘されていた。

     

    このうち、失業保険については新型コロナ対策の暫定措置として新設された「パンデミック失業支援」(PUA)や「パンデミック緊急失業補償」(PEUC)、失業保険の追加給付措置が21年9月で期限を迎えたことから、失業保険の継続受給者数が大幅な減少となっており、足元では200万人台と新型コロナ流行前の水準に低下している[図表8]。

     

    [図表8]失業保険継続受給者数(プログラム別)
    [図表8]失業保険継続受給者数(プログラム別)

     

    このため、手厚い失業保険が理由の労働供給の回復の遅れは相当程度解消されたとみられる。

     

    一方、新型コロナ罹患等が原因の非就業者数については[前掲図表4]で示されるように、オミクロン株の感染拡大の影響で22年入り後に増加に転じており、労働供給回復の遅れの要因として残っている。

     

    今後、新型コロナの感染が抑制されることでこれらの非就業者数が減少し、プライムエイジの労働参加率は回復基調が持続するとみられるものの、新型コロナ流行前の水準に回復するには今しばらく時間を要そう。

     

    時間当たり賃金…労働需給の逼迫から名目賃金は大幅上昇も、実質ベースではマイナス

     

    労働需給の逼迫を背景に賃金の上昇が加速している。時間当たり賃金は新型コロナ流行後に変動が大きくなっており、評価が難しくなっているものの、22年1月が前年同月比+5.7%と新型コロナ流行前の3%台を大幅に上回る水準となっている[図表9]。

     

    [図表9]時間当たり賃金(名目・実質)
    [図表9]時間当たり賃金(名目・実質)

     

    時間当たり賃金を業種別にみると、雇用回復が遅れ人手不足が深刻な「娯楽・宿泊」が前年同月比+15.8%と突出しているほか、物流や医療など新型コロナの影響を大きく受けた「運輸・倉庫」が+9.9%、「教育・医療」が+8.4%と次いでいる[図表10]。現状では大幅な賃金上昇は一部の業種に留まっていると言えよう。

     

    [図表10]業種別の時間当たり賃金伸び率
    [図表10]業種別の時間当たり賃金伸び率

     

    一方、名目賃金の上昇にも関わらず、物価を加味した実質ベースでの時間当たり賃金は22年1月が前年同月比▲1.7%と21年4月以降はマイナスが持続しており、足元で賃金上昇がインフレ高進に追いついていない[前掲図表9]。

     

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    ※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
    ※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2022年2月25日に公開したレポートを転載したものです。

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