2022年2月のロシアによるウクライナへの軍事侵攻について、各国が非難の声を上げている。一方中国は、他国とさりげなく足並みをずらしており、その立ち位置はなんとも微妙だ。実は中国の立ち居振る舞いの理由は、2014年のロシアによるクリミア併合から探ることができる。このため、以下、当時の筆者の分析を改めて紹介する。

非対称的な中露経済関係

ロシア経済との関係はより重要だ。マクロ的には、欧米の制裁が強化されると、ロシア経済が一定の打撃を受けることは間違いないが、各国経済が相互依存を強めている現状、結局それは、欧米も含めた世界経済全体に負の影響が及び、中国経済にとっても、その外部環境が全体として悪化することを意味する。

 

たとえば、ロシアの外貨準備は2014年3月約5,000億ドルで比較的潤沢(15-20ヵ月の輸入額に相当)と言えるが、その大半は米ドルやユーロで保有されており、制裁で外貨資産凍結となると大きな影響を受ける。またロシアは2013年約2,000億ドルの貿易黒字を記録しているが、その70%以上を対EU貿易で稼いでおり、制裁によってEUとの貿易が縮小すると、赤字を記録している対中貿易の支払いにも影響してくる。

 

他方、経済の相互依存が強まっているだけに、欧米としても、以前のように、単に政治的な観点から一方的に経済制裁を科すことは、自らへの影響も考えると難しくなっており、制裁は一定範囲に止まる(止まらざるを得ない)とも考えられる。

 

(注)本表の対中国貿易の係数は、ロシア側統計または市場の事前予測に基づくものと考えられ、中国商務部統計とは一致していない。 (資料)“欧美对俄制裁利好中俄贸易” 熊爱宗,财经观察,2014年4月より引用
[図表2]ロシアの地域別貿易バランス(2013年) (注)本表の対中国貿易の係数は、ロシア側統計または市場の事前予測に基づくものと考えられ、中国商務部統計とは一致していない。
(資料)参考文献3より引用

 

中ロ経済関係を改めて整理すると、まず貿易について、2013年習主席訪ロの際の共同声明で、両国貿易量を15年1,000億ドル、20年2,000億ドルにまで増加させていくとの目標が示されたが、昨年実績は約892億ドルとほぼ前年並みで、目標にはなお道半ばだ。

 

共同声明では貿易構造の多様化もうたわれたが、中国がもっぱらロシアからエネルギーを輸入し、ロシアに消費材や工業製品を輸出する構造に変化はない。2012年対ロ輸入のうち、原油・石油製品の割合は60%以上にのぼる一方、対ロ輸出のうち65%が電気機器・ハイテク製品類、24%が衣類等消費財関連だ。

 

またロシアにとって中国は最大の貿易相手だが、中国にとってロシアの比重はそれほど大きくない。直接投資についても、中国の対外投資に占めるロシアの割合は0.9%、香港等を通じる迂回投資の調整をしても2013年末2.4%で(Heritage Foundation推計)、シェアは横ばいだ。同推計によると、13年末対ロ投資残高185億ドルのうち、半分以上の98億ドルがエネルギー分野への投資である。

 

(注)棒グラフは左目盛り(億ドル)、実線は右目盛り(%) (資料)中国商務部統計より筆者作成。
[図表3]対ロ貿易の推移 (注)棒グラフは左目盛り(億ドル)、実線は右目盛り(%)
(資料)中国商務部統計より筆者作成。

 

(注)カッコ内はシェア (資料)中国商務部統計より筆者作成
[図表4]中国の対ロ直接投資 (注)カッコ内はシェア
(資料)中国商務部統計より筆者作成

 

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