2022年2月、世界が注視するなかロシアはウクライナへ軍事侵攻した。各国が語気を強めてロシアへの非難を表明する一方、中国は「侵攻」「侵略」といった表現を使わず、欧米による対ロシア制裁には同調していない。そこには中国の「微妙な立場」が見え隠れしており、情勢の展開如何で、中国外交がどのような対応となるか予断を許さない。元財務省官僚で中国の政治経済に精通した著者が分析し、同氏が2014年ロシアによるクリミア併合の際に、中国とロシア、ウクライナの政治経済関係についてまとめたレポートを紹介・再掲する。

中国の「歯切れ悪い対応」の理由

2022年2月、ロシアによるウクライナ軍事侵攻の動向を世界が注視している。中国外交部は今のところ、本件について「侵攻」「侵略」といった表現(中国語では通常「入侵」)を使わず、欧米による対ロシア制裁には同調していない。

 

中国の歯切れの悪いとも言える対応は、以下のような中国の微妙な立場を反映している。

 

①米国を中心とする欧米との対立が深まる中国にとって、対ロシア関係に配慮する必要は従来以上に高まっている。

 

②他方で、ウクライナは中国にとって、習近平氏の政治スローガンである「一帯一路」の重要戦略パートナーである。

 

③中国は歴史的にウクライナを主権国家として認めてきており、習近平政権以降では2013年末、友好協力条約締結、また戦略パートナー深化のための共同声明を発出し、「ウクライナが侵略を受け、またはその脅威に晒された場合には、中国は同国に国家安全の保証を提供する」とうたっている。

 

④中国は一貫して、「国家主権尊重・領土不可侵」を外交原則として強調している。

 

⑤中国自身、国内にウイグルなどの分離独立運動を抱えている関係上、ウクライナ東部2州の独立といったことは認め難い。

 

こうした微妙な立ち位置を考えると、情勢の展開如何で、中国外交がどのような対応となるか予断を許さないと言えよう。

 

その規模と世界に対する衝撃の点では、比べるべくもないが、予兆はすでに2014年のロシアによるクリミア併合にあった。筆者は当時、クリミア併合に関連し、中国とロシア、およびウクライナとの政治経済関係につき、外国為替貿易研究会「国際金融」2014年6月号に発表している。

 

その後、いわゆる「戦狼外交」と呼ばれる対外強硬路線を進め、米国を中心とする欧米との対立を深めている習近平政権は、クリミア併合の際に比べ、今回はより対ロシア関係配慮に傾斜しているようには見えるが、基本的な論点そのものは大きくは変わらないと思われることから、参考まで以下、2014年の拙稿を再掲する。

クリミアの独立を支持したロシアへ「圧」をかける欧米

ウクライナ情勢が最終的にどう落ち着くのか、現時点(編集部注:2014年初旬)で東部地域にもクリミアに触発された動きが出て緊張が高まるなど、なお多くの不確定要因がある。ただ、クリミアのウクライナからの独立を支持し、その併合を宣言したロシアと、そのロシアに制裁強化をちらつかせる欧米との関係が、冷戦終結後、最も冷えた時期を迎えたことは疑いない。

 

ところで、こうした状況を中国はどう見ているのかは、断片的にしか伝わってこない。しかしそれは、日本・欧米諸国が本問題に対応する際、考慮に入れておくべきポイントのひとつだ。

 

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