経営者はだれでも、自身の会社を長く存続させたいと願っています。しかし、新型コロナの例をあげるまでもなく、企業の存続を脅かす危機はある日突然、そして何度もやってきます。北海道で運営していた小さな商店が、ピンチをチャンスに転換し続け、企業規模を拡大した例を取り上げながら、ビジネスにおける洞察と決断の重要性について見ていきます。

3億円投資した製造ラインを廃棄、新商品に切り替え

そこで、お金も人員も技術も全てカシューナッツに注ぎこむために、3億円投資したバターピーナッツの製造ラインを思い切って廃棄、先代が好調な時期に蓄えた私財を投げ打って5000万円のカシューナッツ菓子用の製造ラインを投入、新商品製造に注力したのです。

 

その結果、カシューナッツに衣をつけて味付けした「焼カシュー」は他社にはないユニークな商品となり、大ヒット。今では当社の主力商品になっています。一方で変化に適応しようとせず、旧来のやり方を変えなかった周りの問屋や豆菓子メーカーはどんどん廃業していきました。

 

その後も幾度となく危機は訪れました。北海道は80年代まで陸の孤島として競合がなく独り勝ち状態でしたが、1988年の青函トンネル開設により本州の高品質なライバル商品が流入、売上は激減しました。そこで、地場の食材を武器に、北海道産の豆にこだわった商品で本州に立ち向かいました。

 

また、2000年代に入ると、OEM製品が増え薄利に陥ったため、思い切ってOEMから脱却、自社ブランド1本で勝負することにしました。筆者はその都度、過去の成功や従来のやり方にとらわれず、変化に素早く対応し、決断して動いてきました。こういった経営が功を奏し、当社は老舗豆菓子屋へと成長したのです。

外部環境の変化へ「臨機応変に対応する」経営

このように、外部環境の変化に臨機応変に対応する経営のことをレジリエンス経営というのだそうです。レジリエンスは、弾力、回復力、復元力といった意味の言葉で、筆者はこの言葉を、ピンチをはねのけ、チャンスに変える力だと理解しています。

 

例えば、市場の先行きが暗いなら、新しい市場に乗り出す、材料や人件費の高騰で利益が出なくなっているのなら、新製品を生み出す。当然のことのように聞こえるかもしれませんが、実際に危機に直面したときに思い切った決断を下すことは容易ではありません。しかし実際は老舗企業と呼ばれる企業の多くが、このように外部環境の変化に臨機応変に対応することで長い間経営を続けているのです。

 

企業を経営するなかで、どう対策しても避けられない危機はあります。そのため、以降の記事でも、危機を察知する方法や回避術には触れません。渦中で活路を見つけ、ダメージを素早く回復する方法を、当社の経験を踏まえながら説明します。既存の事業で稼げなくなっても、どれだけダメージを負っても、柔軟性を持って変化に食らいついていけば、自分たちの強みを生かせる新たな活路が必ず見えてきます。

 

次回は、ピンチからチャンスを掴む方法の一例として、筆者の会社の事例をなぞりながら、具体的に紹介していきます。

 

 

池田 光司

池田食品株式会社 代表取締役社長

 

 

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