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令和3年度税制改正大綱には「相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直す」と掲載されました。さらに令和4年度税制改正大綱にも、ほぼ同様の内容が記載されました。現在、議論されている「相続税と贈与税の一体化」とは。みていきましょう。

相続税と贈与税…どう改正されるのか?

日本において、いきなり相続税と贈与税が一体化される可能性は低いでしょう。制度を大きく変更すると、国民の反感を招きかねないためです。

 

その一方で諸外国を参考にするのであれば、相続税の課税対象となるのが、相続開始前3年以内の贈与から10年以内や15年以内などに延長されると考えられます。もしくは、暦年贈与の仕組みを廃止して、相続時精算課税制度に一本化し、実質的に贈与税のほぼすべてが相続税に統合される可能性もあります。

 

また、現行では相続税の3年内加算ルールの対象となるのは、基本的に相続や遺贈によって財産を取得した相続人です。孫やひ孫など、遺産を相続しなかった人は、相続開始前3年内加算ルールが適用されません。それが改正後は、相続開始前の一定期間内であれば、孫やひ孫への贈与も相続税の課税対象になる可能性があります。

早めの生前贈与…有効な選択肢は?

税制改正大綱に、相続税と贈与税の一体化を本格的に検討すると明記されているため、生前贈与での相続対策は、数年以内にやりにくくなると考えたほうが賢明でしょう。相続対策として暦年贈与を考えているのであれば、今すぐにでも行動に移すことをおすすめします。

 

たとえば金融商品の「不動産小口化商品」であれば、現金よりも多くの資産を贈与できる可能性があります。不動産小口化商品は、マンションや商業施設などの不動産が小口化されて販売される金融商品であり、1口あたり数万〜1,000万円程度で購入が可能です。

 

不動産小口化商品のうち「任意組合型」と呼ばれるタイプは、相続税や贈与税を計算する際に、現物の不動産と同じく以下の方法で評価額が計算されます。

 

● 土地部分の評価額:時価の8割程度である「路線価」をもとに評価

● 建物部分の評価額:時価の7割程度である「固定資産税評価額」をもとに評価

 

またマンションやアパートなど賃貸用の不動産は、土地や建物の評価額を計算する際にさらに一定割合が減額されます。そのため額面通りで評価される現金よりも、任意組合型の不動産小口化商品のほうが、短期間でより多くの資産を贈与することが可能なのです。

 

限られた期間で、少しでも多くの資産を贈与したいのであれば、不動産小口化商品の活用を検討してみてはいかがでしょうか。

「住宅取得等資金の贈与税の非課税措置」が改正

令和4年度の税制改正大綱では、贈与税の非課税措置の一種である「住宅取得等資金の贈与税の非課税措置」が改正となりました。住宅取得等資金の贈与税の非課税措置は、子どもや孫が自ら住むための物件を新築したり購入したりするときに、一定額までの贈与が非課税となる制度です。

 

具体的には、非課税措置を適用できる期限が、2021年(令和3年)12月31日から2023年(令和5年)12月31日へと2年間延長されています。また、2022年(令和4年)1月1日以降の非課税となる贈与額は、以下の通り取得する住宅の種類によって決まります。

 

● 耐震、省エネまたはバリアフリーの住宅用家屋:1,000万円

● 上記以外の住宅用家屋:500万円

 

2021年(令和3年)12月31日までは最高1,500万円までの贈与が非課税でした。そのため改正によって、非課税枠は縮小されています。

 

一方で緩和された要件もあります。改正前は、築20年以上(マンションをはじめとした耐火建築物は25年以内)の中古住宅でなければ、非課税措置を適用できませんでした。それが改正後は、築年数を問われなくなっています。

まとめ

令和4年度税制改正大綱で、相続税と贈与税の一体化について具体的な改正案は示されなかったものの、引き続き本格的に検討されることが明記されました。早ければ、2022年12月に発表される令和5年度の税制改正大綱で、相続税と贈与税の一体化に向けた改正内容が発表されるでしょう。

 

とはいえ、いきなり相続税と贈与税が一体化する可能性は低いでしょう。「暦年課税を存続させて、相続税開始前の3年以内加算ルールを10年以内や15年以内などに延長する」または「暦年課税を廃止して、相続時精算課税制度に統一する」のどちらかが実施されると考えられます。

 

相続対策としての生前贈与は、近い将来にできなくなるでしょう。生前贈与を検討している方は、早めに相続税専門の税理士に相談するのがおすすめです。

 

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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