「国内旅行になら行きたい」回答多数…コロナ禍における「日本人の旅行観」の現状

「国内旅行になら行きたい」回答多数…コロナ禍における「日本人の旅行観」の現状

コロナ禍で、国内旅行への注目度が高まっています。旅行の目的には「歴史・文化観光」を挙げる人も多く、地域の古い建物を活用することで、観光客の集客、ひいては地方創生もつながる可能性があります。歴史的建築物の再生・活用を中心に活躍する一級建築士の鈴木勇人氏が解説します。

古い建物は「地域のアイデンティティ」になる

国内に限ることではありませんが、人気のまちには人気の建築物があります。そして、その多くは新しい建物ではなく、古い建物です。

 

思いつくままに海外の人気のまちと代表的な建築物を挙げると、パリなら凱旋門にエッフェル塔、ロンドンであればロンドン塔やビッグベン、バルセロナにはサグラダファミリアをはじめとする建築家ガウディの作品が数多く残されています。ニューヨークは街としては先端的なイメージがありますが、そのシンボル的存在の「自由の女神」像が建てられたのは明治時代のことです。

 

国内に目を転じるとキリがないので控えることにしますが、私の住む福島に限っても、古い町並みや歴史をたたえる建築物はたくさんあります。

 

例えば、南会津郡下郷町にある「大内宿」です。下野街道沿いにあるかつての宿場町ですが、茅葺き屋根の民家が建ち並び、まるで江戸時代にまで時をさかのぼったような錯覚を覚える風情をたたえています。

 

この大内宿は「国選定重要伝統的建造物群保存地区」にも指定されています。国選定重要伝統的建造物群保存地区とは、文化財保護法に基づくもので、日本にとって価値が高いと判断された城下町や宿場町、門前町などを選定し、保存に努めるという制度です。令和2(2020)年時点で全国に123地区があり、およそ2万9000件の伝統的建築物等が保護されています。大内宿もその一つというわけです。

 

耶麻郡猪苗代町には「野口英世記念館」があります。福島が生んだ偉人の一人である野口英世博士の生家を保存・公開している施設です。

 

野口英世が医師を目指すきっかけとなったのは、幼少の頃に囲炉裏で火傷を負ったことだということは多くの人が知っていると思いますが、そのときの囲炉裏も保存されています。野口英世が生まれたのは明治9(1876)年ですから、それ以前に建てられた民家が今も残されているということになります。

 

また、会津若松市には国指定重要文化財にもなっている「さざえ堂」があります。

 

寛政8(1796)年に建てられた六角山荘のお堂ですが、上りと下りの通路が異なる二重螺旋の構造でつくられています。このような構造をもつ建築物は世界的にも珍しく、やはり多くの観光客を集めています。

 

古い建築物は地域にとっての「宝物」だと私は考えていますが、それは観光名所として多くの人を集めるからという理由だけではありません。その地域において長い歳月にわたり育まれてきた文化が込められているからです。

 

そうした文化を大切にする姿勢というのは、先人たちへの敬意があってこそのことですし、そのような思いを次の世代に伝えていくことにもなります。そして文化は自分たちが住む地域への愛着や誇りにもつながっていきます。

 

言うなれば「地域のアイデンティティ」を象徴する存在として建築物をとらえることができるわけです。これは地域の活性化において重要な役割を果たすことだともいえます。

 

 

鈴木 勇人

ボーダレス総合計画事務所 代表取締役

 

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鈴木 勇人

幻冬舎メディアコンサルティング

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