(写真はイメージです/PIXTA)

東京都心部Aクラスビルの空室率は、テレワークの普及など先行き不透明感が広がるなか上昇基調で推移し3%台に達した一方、成約賃料は2014年第4四半期の水準まで下落しました。本記事ではニッセイ基礎研究所の吉田資氏が、今後のオフィス需要を踏まえた東京都心部Aクラスビル市場の動向と見通しについて解説します。※本記事は、ニッセイ基礎研究所のレポートを転載したものです。

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    企業のオフィス戦略見直しを踏まえた、今後のオフィス需要を考える

    新型コロナウィルス感染拡大を背景に在宅勤務が普及し、企業がオフィス戦略の見直しを進めるなか、最適な「オフィス面積」の検討は重要な課題の1つである。ザイマックス不動産総合研究所によれば、「オフィス面積」は、これまで「オフィス利用人数×1人あたりオフィス面積」で考えられてきた。
    ※ ザイマックス不動産総合研究所「コロナ禍で変わるオフィス面積の捉え方」(2021.12.14)


    しかし、在宅勤務が浸透したことで、「座席数(在籍人数 × 出社率※1× 席余裕率※2)× 1席あたりオフィス面積」でオフィス面積を捉える考え方が広がっている。
    ※1 オフィスと在宅での勤務割合
    ※2 出社するワーカー1 人に対する席数割合


    以下では、

     

    1.今後の「在籍人数」を見通すうえで重要となる「オフィスワーカー数の動向」、
    2.「出社率」をはじめとする「在宅勤務の状況」、
    3.「席余裕率」に影響する「フリーアドレスの導入状況」、
    4.「1席あたりオフィス面積」を定める「オフィス環境整備の方針」

     

    について概観し、今後のオフィス需要への影響を考察する。
    ※ 従業員が固定した自分の座席を持たず、業務内容に合わせて就労する席を自由に選択するオフィス形式。

     

    1.オフィスワーカー数の動向

     

    内閣府・財務省「法人企業景気予測調査」によれば、「関東地方」の「従業員数判断BSI」(全産業)は、2020年第1四半期の+20.3から2020年第2四半期の+4.6へ大きく低下した後、緩やかな回復が続いており、2021年第4四半期は+13.6となった[図表8]。
    ※ 従業員数が「不足気味」と回答した割合から「過剰気味」と回答した割合を引いた値。マイナス幅が大きいほど雇用環境の悪化を示す。

     

    [図表8]従業員数判断BSI(関東地方)

     

    新型コロナウィルス感染拡大によって雇用環境は一時悪化したが、その後は順調な回復を示している。

     

    業種別にみると、「製造業」、「非製造業」ともに回復しており、2021年第4四半期に「製造業」は+9.2、「非製造業」は+15.8となった。オフィスワーカーの割合の高い「非製造業」は、人手不足感がより強いと言える。

     

    次に、東京都の就業者数(対前年同期比)の動向を確認する。総務省「労働力調査」によれば、東京都の就業者数は2020年第1四半期(▲0.2万人)から3期連続でマイナスとなった。

     

    その後、2020年第4四半期(+23.5万人)にプラスに転じたが、2021年第2四半期(▲10.0万人)は緊急事態宣言や新卒採用抑制の影響等を受けてマイナスに、翌第3四半期(+11.8万人)は再びプラスとなるなど、一進一退の動きとなっている[図表9左図]。

     

    産業別(前年同期比)では、都心5区のオフィスワーカーに占める割合の大きい「学術研究,専門・技術サービス業」が+16%、「情報通信業」が+3%となった[図表9右図]。

     

    [図表9]東京都の就業者数

     

    このように、東京都の就業者数は全体では増えていないものの、オフィスワーカーの比率の高い産業では就業者の増加がみられる。引き続き、雇用情勢を注視する必要があるが、東京都心部のオフィスワーカー数が減少する懸念は小さいといえよう。

     

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    ※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
    ※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2022年2月21日に公開したレポートを転載したものです。

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