※画像はイメージです/PIXTA

親族の間で不動産を譲る手段には、「贈与」や「売買」があります。贈与は無償で譲ることができますが、譲り受けた人に高額な贈与税が課税されます。贈与税を避ける現実的な方法として、親族どうしで売買することが多いですが、親族間売買にも注意すべき点があります。みていきましょう。

親族間売買の適正価格とは?

親族間売買で贈与税が課税されないようにするには、第三者との取引による通常の売買価格に準じた適正価格で売買しなければなりません。

 

親族間売買の適正価格をどのように決めるかは大変難しい問題で、国税庁も基準を示していませんが、目安となる考え方はいくつかあります。

 

  • 不動産業者による査定価格を使う
  • 不動産鑑定価格を使う
  • 路線価を1.25倍する
  • 路線価をそのまま使う

 

不動産業者による査定や不動産鑑定士による鑑定であれば、通常の売買価格に近い価格を出してもらえるでしょう。ただし、査定や鑑定による価格は高くなる傾向があり、できるだけ安く売買したいという親族間売買のニーズとは一致しない場合もあります。さらに、不動産鑑定士に依頼すると数十万円に及ぶ報酬がかかってしまいます。

 

実務上よく行われる対応としては、路線価を1.25倍して(80%で割り戻して)適正価格を求めることもあります。この対応は、路線価が地価公示価格等の80%で定められていることを根拠にしたものです。

 

路線価をそのまま適正価格として使うことも選択肢になります。過去の裁判事例では、路線価で親族間売買を行った場合について、相続税法第7条に定める著しく低い価額での譲渡にはあたらないと判断されています(東京地方裁判所平成19年8月23日判決、平成18年(行ウ)第562号)。

 

なお、路線価をもとに適正価格を求める場合は、地価の変動で路線価が時価から大きくかけ離れていない(時価の80%程度であること)ことが前提です。大きくかけ離れている場合は、不動産鑑定などで実際の取引価格に近い価格を求める必要があるので注意しましょう。

親族間売買はどの専門家に相談すればよい?

不動産の取引では、親族間であっても契約書の作成や登記などの手続きが必要で、自分たちだけで取引を済ませることは困難です。さらに、贈与税が課税されない適正価格を決めるためには、税務の知識や実務に基づいたノウハウが欠かせません。

 

以上の理由から、親族間売買であっても専門家に相談して進めることをおすすめします。

 

不動産の親族間売買について相談できる専門家は、

 

  • 契約書の作成・登記だけなら司法書士
  • 適正価格の判定は税理士

 

といったように分野が分かれてしまいます。ただし、相続対策や贈与を専門にしている事務所であれば、一か所で対応してもらえるでしょう。

 

不動産会社を通して取引をするという方法もありますが、売り手と買い手の双方が仲介手数料を払うことになるので注意が必要です。ただし、買い手が住宅ローンを組む場合は、重要事項説明書など取引書類の提示が求められるため、不動産会社に仲介を依頼する必要があります。

 

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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