(※写真はイメージです/PIXTA)

海外で日本食が注目されています。アメリカを中心に健康的な食生活や自然食がブームとなり、日本の食文化の人気が高まったといいます。人気になっても本格的な日本食が海外では食べられないといいます。何が問題なのでしょうか。渡瀬裕哉氏が著書『無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和』(ワニブックス)で解説します。

日本の潜在力を活かせない本当の理由は?

日本は、環太平洋、アジア、欧州、アメリカと、大きな貿易協定にすべて参加しています。日本には輸出や投資のハブとして機能する可能性が国際情勢の中で生まれています。

日本食も、この環境の中にあるビジネスのひとつです。

 

こうした貿易協定の中でも、特にTPPは知的財産権のルールを守ろうという重要な項目を定めています。調理法や料理に関する知的財産としての取り扱いは、国内的にも国際的にも色々な法解釈がありますが、知的財産や特許として守られているものもあります。共通のルールをもとに、一緒にビジネスを行えることでお互いの文化を尊重しながら新しいものを生み出し、収益を上げ、美味しいものが食べられる。こんなに良いことはありません。

 

この環境を活かせない、日本の潜在力を解放させない仕組みは、日本国内にあります。多くの規制や、複雑な税制、高い税率です。農産物に限らず、工業製品や色々な分野で、日本は競争力が弱くなったと言われます。

 

実際には日本全体で輸出は伸び続けています。これまで通りの仕組みでも輸出の規模が拡大してきたのですから、日本側がもっと設備投資や改良、制度の見直しを行い世界市場への輸出を睨んだ国内条件を整えれば、もっと大きく輸出を伸ばせるのです。

 

農業の規制に関しては、国家戦略特区の兵庫県養父市の事例を紹介しましたが、それ以外にも日本の農業生産性はもっと上げられるとして、民間から挑戦する人たちも出てきています。

 

日本はすでに先進国として、国際社会で何十年もの実績を積んでいます。加盟各国と先進国基準の近代的なルールを共有し、健全な運用を支援しながら、自分たちも世界市場へ打って出ればよいのです。

 

日本食のように産業とコンテンツが一体となる競争力の高い分野をはじめ、多くの産業で歴史と文化、経験に裏打ちされた分厚い土台があるのですから、打って出れば勝てるはずです。政府がそれを妨げてはいけません。また、産業を担う国民のマインドが保護主義的なままでは、日本全体の経済規模だって縮んでいってしまいます。

 

日本の食材を含めた日本食の普及には、何よりも、自由貿易協定で人の往来がスムーズになり、海外に住む日本人がもっと増えていくときに、個人単位でも利益があります。海外で日本人が暮らしやすくなることです。

 

元々、カリフォルニアでの米栽培は、移民していった人たちの需要を満たすために始まりました。現在、若い人の留学やワーキングホリデーでも、ホームシックになる要因のひとつに各国との食文化の大きな違いが挙げられています。日本の調味料やお菓子を持っていくことが対策方法になっているくらいです。

 

そういうときに現地の料理も、故郷の味である日本食も、両方を当たり前に食べることができれば、勉強以外のことにエネルギーを割かれなくて済みます。海外に行くことの多い筆者にとっても、行く先々での日本食の普及は嬉しい。そして重要なのは、普及は政府ではなく民間企業がビジネスとして担うのだということです。

 

そのために日本に必要なのは、民間が世界へ打って出るために自分たちの持つポテンシャルをどうやって解放するかを自ら考え、政府によって妨げられているもの、後発国基準の保護規制を取り除くことなのです。

 

渡瀬 裕哉
国際政治アナリスト
早稲田大学招聘研究員

 

 

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    ※本連載は渡瀬裕哉氏の著書『無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和』(ワニブックス)から一部を抜粋し、再編集したものです。

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