(※写真はイメージです/PIXTA)

海外で日本食が注目されています。アメリカを中心に健康的な食生活や自然食がブームとなり、日本の食文化の人気が高まったといいます。人気になっても本格的な日本食が海外では食べられないといいます。何が問題なのでしょうか。渡瀬裕哉氏が著書『無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和』(ワニブックス)で解説します。

日本食を提供するのは魅力的な事業だが

無形文化遺産の趣旨にあるように、日本食を文化や生活様式と関連して自然と身に着けている日本人からすれば違和感がありますが、社会を構成する人種の多様化、グローバル化というのは、そういうものです。事業を買い取ってでも続けようというのは、利益が出るからです。

 

それくらい、日本食を提供するのは魅力的な事業となっているのです。

 

日本食の美味しさは、欧米の食事とは異次元です。酪農の話のときにも強調しましたが、料理の場合も同じです。とにかく日本の食材や料理は美味しい。特にアメリカの場合は、味がないか塩味かケチャップ味のようなことも多く、日本のような素材の味を活かした繊細な味付けは、ものすごく美味しく感じられるのです。

 

一時期は政府が海外の日本食レストランに認証を与えようとして、アメリカを中心に不評を買ったこともあります。元々は、寿司をはじめ生魚を扱う日本料理の厳しい衛生基準を満たしていない店舗が、生魚を食べる習慣の少ない海外でよく見られたこともあり、日本食の安全性や信頼性が損なわれるという危機感から始まっています。

 

現在はむしろ、衛生も含めたスタンダードな日本料理の技術を持つ料理人を広く海外からも募集し、コンテスト形式で料理を競ってもらって顕彰する形に落ち着いています。

 

最近は、外国人観光客向けの日本料理教室ツアーや、一般向けのレクチャー動画発信など、お店で本格的な日本料理を食べたいという人から家庭で作ってみたいという人にまで、裾野が広がってきました。日本食に合うお酒ということで、日本酒の人気も高まっています。

 

こうした普及の背景を踏まえ、日本食を産業として見た場合、食材の輸出もまだまだこれからです。日本食には欠かせない米にしても、海外の日本食レストランで使われているのはカリフォルニア米が大部分を占めます。カリフォルニア米は、元は戦前の日本人移民が稲作と改良を進めて定着したもので、安価で安定的な供給が可能なため世界中の日本食レストランに輸出されるようになりました。

 

このほか、JETRO(日本貿易振興機構)のレポートを見ると、日本料理に使われる野菜や、コシヒカリなどの国産品種をアメリカで現地生産する試みが続けられています。

 

アメリカで手に入らない野菜の栽培には、土壌の違いなどで生産に困難もともないますが、日本食の普及にともない需要もあり収益が上がるので、他の農家も参入するケースがレポートで報告されています。これは日本食の普及という面では利益ですが、日本の国産農産物の輸出という面ではビジネスの機会を失ってしまっていることになります。

 

日本の農産物は、食材そのものの質も高いのですから、一般向けの調理法もあわせて輸出すれば大きなビジネスになります。最近は豆腐もヘルシーな食材として注目を集めていますが、同じ材料を使っても調理法によってでき上がりは様々です。日本で世界中の高級料理から家庭料理までが楽しめるように、日本の調理法と食材を一緒に輸出してレストランでも家庭でも楽しんでもらえばいいのです。

 

こうしたことにも、自由貿易の体制をきちんと作ることが重要です。お互いの国が保護主義的な政策を行っていると、お互いに美味しいものが食べられないのです。

次ページ日本の潜在力を活かせない本当の理由は?

※本連載は渡瀬裕哉氏の著書『無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和』(ワニブックス)から一部を抜粋し、再編集したものです。

無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和

無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和

渡瀬 裕哉

ワニブックス

現在の日本の政治や経済のムードを変えていくにはどうしたらよいのでしょうか。 タックスペイヤー(納税者)やリスクを取って挑戦する人を大事にする政治を作っていくことが求められているといいいます。 本書には「世の中に…

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