
定年退職後、地方に出かけては「気ままな老後」を過ごしていた富山さん(仮名)。ある日、妹の哀川さん(仮名)あてに病院から一本の電話が。内容は富山さんが脳溢血で緊急搬送されたというものでした。その時、哀川さんが抱いた感情は「心配」ではなく……。のぞみ総合事務所代表司法書士の岡信太郎氏が、実際のエピソードをもとに、お金にまつわる「過酷な現実」を紹介します。
変わり果てた兄…立ちはだかる「入院費」問題
その後、富山さんは一命を取り留めたとの連絡が入りました。
しかし、ここからが波乱の幕開けです。本人は自分の意思で動けなくなったため、治療に加え介助が必要となっています。
富山さんは遠方で倒れたため、術後は地元の病院へ移ることになります。そして、今後は転院先の病院で治療を受けることになります。病院からは、治療中の移動のため民間の救急車を使用すること、手術代を含めた入院費の請求書を哀川さんに送るとの連絡がありました。今後発生する転院後の費用についても、哀川さんが対応せざるを得ません。
富山さんが地元の病院に運ばれ、病室に入ったため、哀川さんは富山さん本人と面会しました。各地に出かけていたときの面影はなく、治療用の管でつながれています。身体は不自由な状態となってしまい、発語はほとんどありません。実際、哀川さんが話しかけても、目が少し動く程度です。変わり果てた兄の姿に、涙よりもため息が出てしまいます。
哀川さんが病室で荷物の整理をしていると、病院の担当者がやってきて「今後のことで確認したいことがあります。少しよろしいでしょうか」と個室に案内されました。
「本人さんに、ご家族はいらっしゃいますか?」と聞かれたため、「近くにいるのは妹の私くらいです」と哀川さんは、答えました。
担当者は、今後の入院にあたっての説明を始め、入院に関する書類を渡しました。そして、後日サインして持ってきてほしいと頼まれました。入院費の支払いについては、請求書を哀川さん宛てに送るので振込んでほしいとも依頼されました。
倒れた際に運ばれた病院の支払いは、すでに終えています。しかし、これからも支払いは続くので、哀川さんは早く兄の通帳を預からないといけないと考え始めました。いつまでも自分が手出しするわけにはいきません。
本人の状態と医師の説明から、兄が今後自宅に戻る見込みは少なく、最後まで病院にお世話になるだろうと感じています。いずれにせよ、兄のお金から支払えるようにしなければなりません。
幸い家のカギを預かっていたので、部屋に入り何とか通帳を見つけることができました。銀行の通帳ケースにキャッシュカードが入っていたので、そのまま預かることにしました。〝これで、支払いは何とかなる!〞と哀川さんは、少しホッとしました。
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