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独居高齢者が増加中だが…「子どもと同居」「高齢者施設入所」が必ずしも「老後の幸福」と結びつかないと言えるわけ

高齢化孤独死

独居高齢者が増加中だが…「子どもと同居」「高齢者施設入所」が必ずしも「老後の幸福」と結びつかないと言えるわけ (※写真はイメージです/PIXTA)

人生100年時代。NPO法人「老いの工学研究所」理事長の川口雅裕氏は、書籍『年寄りは集まって住め』のなかで、「高齢化社会」の知られざる真実を明かしています。

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高齢期の幸福を考える上で「孤独の問題」は不可避

孤独は現代社会の大きな問題です。高齢者についても、孤独は心身の衰えを加速しやすく、助けが得にくいために体調急変時に放置されたり、孤独死につながったりする危険もあり、その解消は喫緊の課題となっています。

 

「高齢期の幸福」を考えるにあたって、孤独の問題は避けては通れません。しかしながら、孤独を単に「一人でいること」と捉え、一人でいる人は全て「孤独」とみなして助けるべきかというと、そんなに単純な話ではありません。

 

いつも一人で街に出て絵を描いている人、いつも一人で本を読んでいる人が、決して絵画サークルに入れなかった、読書サークルから除け者にされたというわけではありません。

 

「加齢のパラドクス」で触れたように、高齢期になって幸福感が上昇するのは、嫌な人と付き合ったり、気の進まない場に出て行ったりしなくていいからだ(離脱説)と考えると、一人でいる人を無理に交流の場に連れていくのは、ストレスになりかねません。

 

一人でいる姿を見て、「孤独で可哀想だ」と勝手な判断をし、関わろうとしたり、どこかに連れ出そうとしたりするのは大きなお世話です。そもそも、誰でも「一人でいたい」という気持ちと、「集団の一員でいたい」という気持ちの両方を持っていますから、一概に「一人でいるのは良くない」というのも乱暴な話です(これからは、一人でいてもインターネットでつながりを持つから構わないという人も増えていくかもしれません)。

施設に入所後、すぐ退所したくなる高齢者は少なくない

イギリスの精神科医であり心理学者のアンソニー・ストーは、『孤独』という著書の中で、「孤独になる能力は、自己発見と自己実現をもたらす。自分の最も深いところにある欲求、感情、衝動が自覚できる」と述べています。孤独は必ずしも悪いものではなく、孤独によって得られる価値があるという、この考え方に納得される方も多いでしょう。

 

逆の例で言えば、卓球サークルに入ってワイワイと楽しく活動しているように見えても、本人はいつも仲間に気を遣って疲れ切り、活動後に皆で行く喫茶店での会話にまったく興味が湧かないといった場合、傍目には楽しそうでも、気持ちは孤独かもしれません。

 

場に馴染めないときに感じる孤独というのは、周りに人がいればいるほど強くなるものです。元気なうちに、万が一に備えて高齢者施設に入ったものの、そこで暮らす人たちの受け身の態度や職員のよそよそしい姿勢が嫌で、すぐに退所したくなる人が少なくないそうですが、これも似たような例と言えるでしょう。

「近いところに助けてくれる人がいること」が大切

「孤独」を辞書で引くと「①仲間や身寄りがなく、ひとりぼっちであること。②思うことを語ったり、心を通い合わせたりする人が一人もなく寂しいこと。また、そのさま。」とあります。

 

①は外形、②は内面を言っています。いつも一人で本を読んでいる人は、確かに①ひとりぼっちだけれども、②寂しくはない(あるいは楽しんでいる)かもしれません。卓球サークルに楽しみが見出せない人は、①仲間はいるけど、②寂しいかもしれない。高齢者の孤独問題の取り扱いは、そう簡単ではありません。

 

一方、「孤立」の意味は「一つまたは一人だけ他から離れて、つながりや助けのないこと」とあります。「孤独」に比べればこちらは判断しやすく、また高齢者は避けるべき状況と言えます。

 

高齢になると、近いところに助けてくれる人がいることが大切です。家庭内での事故や体調急変、災害などいざという時に放置されかねないような環境は危険です。またそういう人がいれば、面倒な作業や手続き、力仕事なども代わってやってもらえるでしょう。

子どもとの「近居」が、優れた住まい方といえるワケ

ある高齢者住宅では、毎日必ずラウンジに出てきて本や新聞を読んでいる男性がいます。ラウンジの近くにはスタッフが常駐しており、近くで人が行き交い、少しの賑わいもあります。

 

読書は家の中でもできますが、このような場にいれば安心できるのでしょう。この人は毎日一人でいますが、他の人たちから離れてはいませんし、もし何かあればいつでも助けを求められるような緩いつながりの中で暮らしていて、私には孤立もしていなければ、孤独でもないように見えます。

 

こう考えてくると、高齢者とその子が同居ではないものの近くに住む「近居」は優れた住まい方だと思います。

 

高齢者にとっては、子や孫というつながりが近くにある安心があり、子や孫だから助けを求めやすいし、いつでも会って寂しさを軽減できるという条件が揃っているからです。同居していると子や孫の生活に巻き込まれてしまって、かえって孤独を感じることもあるでしょう。これが近年、近居を望む人が増えている理由かもしれません。

 

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川口 雅裕


NPO法人「老いの工学研究所」理事長。 1964年生。京都大学教育学部卒。 株式会社リクルートコスモス(現株式会社コスモスイニシア)で、組織人事および広報を担当。 退社後、組織人事コンサルタントを経て、2010年より高齢社会に関する研究活動を開始。約1万6千人に上る会員を持つ「老いの工学研究所」でアンケート調査や、インタビューなどのフィールドワークを実施。高齢期の暮らしに関する講演やセミナー講師のほか、様々なメディアで連載・寄稿を行っている。 著書に、「だから社員が育たない」(労働調査会)、「速習!看護管理者のためのフレームワーク思考53」(メディカ出版)、「実践!看護フレームワーク思考 BASIC20」(メディカ出版)、「顧客満足はなぜ実現しないのか」(JDC出版)、「なりたい老人になろう~65歳からの楽しい年のとり方」(Kindle版)がある。

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本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『年寄りは集まって住め』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。最新の法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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