(※写真はイメージです/PIXTA)

2020年度、日本における認知症の推定患者数は600万人を超えました。埼玉森林病院院長で認知症専門医の磯野浩氏が解説していきます。

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    家族にも実践可能…「効果的なケア」の「10ヵ条」

    その効果的な関わり方の一つに「カンフォータブル・ケア」というものがあります。

     

    北海道札幌市にある旭山病院の看護師長・南敦司先生が提唱した、心地よさをかなえるための認知症ケアの手法で、認知症患者のBPSDを軽くする効果もあるということで、全国にその考え方が広まりつつあります。

     

    カンフォータブル・ケアでは、患者にとって快い刺激を与え、安心感を得てもらうことで安定感を図ります。快い刺激とは、笑顔を向ける、目線を合わせる、優しく触れる、といったことで、特別な施術法などではなく、日常的に誰でも行えることです。

     

    したがって、医療や介護従事者だけでなく、家族にも実践可能です。

     

    当院でこのケアを取り入れたのは2018年からです。当時、この考え方は広まり始めたばかりで、私も偶然南先生とご一緒した講演会で知ったのですが、とても良い考え方だと思い、先生に埼玉県までお越しいただき講演もしてもらいました。

     

    以来、看護師のミーティングの場で毎朝、カンフォータブル・ケアの基本10ヵ条(別掲)を唱和し業務にあたっていますが、スタッフの対応も変わってきましたし、統計をとっているわけではないものの、対応に困るようなBPSDのケースは目に見えて少なくなってきています。

     

    【カンフォータブル・ケアの10ヵ条】

     

    ①いつも笑顔

    ②いつも敬語

    ③目線を合わせる

    ④優しく触れる

    ⑤褒める

    ⑥謝る態度を見せる

    ⑦不快なことは素早く終わらせる

    ⑧演じる要素をもつ

    ⑨気持ちに余裕をもつ

    ⑩相手に関心を向ける

     

    これらの10項目を基本技術とし、心地良いと感じる刺激(快刺激)を提供することで、認知症のBPSD(暴言、暴力、興奮、抑うつ、昼夜逆転、幻覚、妄想、徘徊など)を抑えます。

     

    BPSDが出現すると、周囲からはとかく「手に負えない」「話が通じない」と思われ、ケアにも消極的になりがちです。とにかくトラブルが起こらないようにしさえすれば、と本人の意志を無視して、行動範囲を狭めたり、禁止事項を増やしたりしてしまうものです。

     

    確かに、BPSDのある認知症の人のケアは負担が大きいものであり、そうしたい気持ちも分かります。

     

    しかし、それが本人のストレスとなって余計に症状がひどくなったり、周囲も対応に追われ常にぴりぴりとしていなければならず疲弊したりして、結局は誰も救われません。

     

    まして、人をもののようにみなしたり、効率重視でルーチンをこなしたりするような認知症ケアでは、症状は決して良くなりません。

    次ページ「そんなの当たり前では?」と思うかもしれないが…

    ※本連載は、磯野浩氏の著書『認知症診断の不都合な真実』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

    認知症診断の不都合な真実

    認知症診断の不都合な真実

    磯野 浩

    幻冬舎メディアコンサルティング

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