他の先進国と比べ、「断熱性能」が大きく劣ってしまっている日本の住宅。なぜ、我が国はこれまで断熱性能を軽視してきたのでしょうか。その経緯について、住まいるサポート株式会社代表取締役・高橋彰氏と東京大学大学院准教授・前真之氏がインタビュー形式で解説していきます。 ※本記事は前編です。後編では、今後予想される「住宅性能の制度改革」と、これから家を建てる人へのアドバイスについて解説します。
「国土交通省の方針」大きな転換点を迎えたワケ
Q:ここ最近、住宅の断熱性能をめぐって国土交通省の方針が大きく変わりつつあるようですが、何が起きているのでしょうか?
A:国土交通省は長い間、構造偽装事件の後遺症もあってか、とにかく建設業界のビジネスを邪魔しないことを最優先し、断熱や省エネに関して高いレベルを設定することを避けてきました。従来の「建設業界の都合最優先」が、住宅の性能向上を遅らせ、そのツケを住宅購入者・国民に押し付けてきたのは明らかです。
しかし、2020年ごろから脱炭素化が政策として重視されるようになり、やむなく方針転換せざるを得なくなってきたのでしょう。
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ここまで前先生に、「住宅の断熱性能の重要性」と、「日本で住宅の断熱性能が軽視され続けてきた背景」について伺ってきました。
後編『今、安易に家を建てると「資産価値激減」の可能性…これから日本の住宅が「快適になる」ワケ』では、国土交通省の方針転換により、今後どのような制度改革が予想されるのか? そして今家を建てるならどんなことに気をつけるべきか?について伺い、解説していきます。
高橋 彰
住まいるサポート株式会社 代表取締役
前 真之
東京大学大学院 工学系研究科建築学専攻 准教授
住まいるサポート株式会社 代表取締役
一般社団法人日本エネルギーパス協会 広報室長
神奈川県出身。東京大学修士課程(木造建築コース)修了、同大博士課程在学中。千葉大学工学部建築工学科卒。リクルートビル事業部、UG都市建築、三和総合研究所、日本ERIなどで都市計画コンサルティングや省エネ住宅に関する制度設計等に携わった後、2018年に「結露のない健康・快適な住まいづくり」のサポートを行っている住まいるサポート株式会社を起業。日本でトップクラスの性能を誇る工務店・ハウスメーカーを厳選して提携し、消費者に無料で紹介する「高性能な住まいの相談室」や、デザインと高性能を両立する設計を行う建築家のマッチングサービス等を提供。また、横浜市住宅政策課主催のセミナーや毎日新聞社主催のセミナー等、多数のセミナーに登壇、メディアへの出演など、高性能な住まいづくりに関する情報発信に積極的に取り組んでいる。住まいづくりを考えている方々への情報発信を通して、ひとりでも多くの方が、住宅の性能に関する基礎知識を持ち、他の先進国並みに「結露のない健康・快適な家」を普及させることを目標としている。主な著書に、「元気で賢い子どもが育つ! 病気にならない家」(クローバー出版)、「人生の質を向上させるデザイン性×高性能の住まい: 建築家と創る高気密・高断熱住宅」(ゴマブックス)など。
●高性能な住まいの相談室:https://sml-support.com/lp
●建築家と創る高気密・高断熱住宅:https://sml-support.com/archicon
著者プロフィール詳細
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連載人生の質(QOL)が激変!性能にこだわった住まいづくりの知識
東京大学大学院 工学系研究科建築学専攻 准教授
昭和50年生まれ。広島県出身。
住宅のエネルギー消費全般を研究テーマに、建築物省エネ法における住宅の給湯・コジェネ設備の実態に即した1次エネ評価手法の開発に関わる。
現在は、健康・快適な生活を太陽エネルギーで実現するエコハウスの実現と普及のための要素技術・設計手法の開発に取り組んでいる。
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