(写真はイメージです/PIXTA)

本記事では、ニッセイ基礎研究所の三尾幸吉郎氏が中国経済の現況について解説します。※本記事は、ニッセイ基礎研究所の中国経済に関するレポートを転載したものです。

不動産規制

第二に挙げる注目点は不動産規制の行方である。ここもとの景気悪化を食い止める上では、政策金利の引き下げを継続するとともに不動産規制を緩和するのが有効だろうが、そうすれば住宅バブルの膨張を許すことになるため、中国政府(含む中国人民銀行)にとっては難しい判断となる。

 

そもそも中国政府が不動産規制を強化した背景には、住宅が一般庶民の手に届かないレベルに高騰したことがある。

 

日本がバブル期にあった1989年にも住宅が高騰し東京都区部の分譲マンション(75平米)の値段は1億円を超え平均年収の15.8倍に達して、一般庶民の手に届かないものとなった。しかし、上海市の住宅価格は筆者試算で16.7倍と日本のバブル期を超えるレベルに達してしまった[図表11]。

 

[図表11]住宅価格とその年間所得の倍率の推移(上海市)
[図表11]住宅価格とその年間所得の倍率の推移(上海市)

 

これに危機感を持った中国政府は「住宅は住むためのものであって投機のためのものではない」と繰り返し主張するとともに、20年8月には不動産会社に対して守るべき「三道紅線」と呼ばれる財務指針を示した。具体的には

 

1.総資産に対する負債の比率が70%以下、
2.自己資本に対する負債の比率が100%以下、
3.現金の短期債務に対する比率が1倍以上

 

の3つの財務指針である。

 

さらに20年12月には、中国工商銀行や国家開発銀行など地場系大型銀行に対して、不動産向け融資が全体の40%、個人向け住宅ローンが全体の32.5%を上限とするなどの「総量規制」を導入すると表明することとなった。

 

しかし、21年に入り両措置が実行に移されると、中国恒大集団が経営不安に陥るなど、不動産業が国内総生産(GDP)を押し下げる事態となった[前掲図表2]。そして、中国政府は21年12月にローンプライムレート(1年)を引き下げるなど景気に配慮する姿勢を強めている。

 

ここもとの利下げは、不動産規制の緩和を示唆するものではなく、21年の全人代で示した「科学技術イノベーション、グリーン発展、小企業・零細企業、自営業者、新しいタイプの農業経営主体、感染症による長期的な影響を受けている業種や企業」に対する“精確(中国語では精准)”な資金供給の一環とも考えられる。中国人民銀行は21年11月19日に公表した貨幣政策執行報告で「不動産を短期的景気刺激手段に使わない」と宣言しているからだ。

 

しかし、中国政府はこれまで何度も不動産を短期的景気刺激手段として使って景気悪化を食い止める一方、住宅バブルに関してはその膨張を許してきたという歴史があるだけに、前述した宣言を鵜呑みにすることもできない[図表12]。

 

[図表12]新築住宅価格と貸出金利の推移
[図表12]新築住宅価格と貸出金利の推移

 

中国政府は今回どのように政策運営するのか、住宅バブル抑制の本気度が試される。

 

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本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2022年1月28日に公開したレポートを転載したものです。

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