(※写真はイメージです/PIXTA)

もともとは戦後つくられた娯楽施設利用税でした。1989年の消費税導入の際にパチンコやボウリングなどは税が廃止されましたが、ゴルフだけがゴルフ場利用税として残りました。なぜなのでしょうか。渡瀬裕哉氏が著書『無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和』(ワニブックス)でゴルフ場利用税について解説します。

ゴルフ場利用税は年間500億円にのぼる

こうした足枷を少しずつ取り除いていくことが、最終的には経済の活性化につながります。日頃、少しずつ課税されると、負担感が分からないのです。ゴルフ場を利用するときには消費税もかかります。二重課税となっているので、小さな課税分で必要性がなくなったものはやめていく必要があります。

 

消費税が増税されるときも、政府は小刻みに上げればいいという姑息な手段を使おうとします。8%から10%に上がるとき、今の状態から2%分ならまだいいかと思ってしまう人もおそらくいたでしょう。消費税は1%上がるだけで、何兆円もの税収金額が変動します。だから政府は上げたがるのですが、同じ分だけ経済へのダメージになっていきます。ゴルフ場利用税も同様で、消費税よりも分かりやすい一例です。利用客1人が払うお金は数百円から高くても1200円です。でも、全部合わせると1年間で500億円が民間から失われているのです。

 

さらに、ゴルフ場利用税は、こうした税金が実はそれほど根拠となる理屈があって決まっているわけではない事例としても面白いのです。

 

このゴルフ場利用税をめぐっては、全国から市町村が集まって「ゴルフ場利用税堅持のための全国市町村連盟」という団体を作っています。全国838の市町村で構成され、これ自体がそもそも税金の無駄ではないのかという意見もありますが、「ゴルフ場利用税の堅持を求める要望書」が国に提出されています。主旨はゴルフ場利用税が市町村にとって財源になっているから取らなければならない、というものです。

 

そして、ゴルフ場にアクセスするための道路、維持管理、ゴルフ場から排出されるゴミの処理、ゴルフ場でケガをした場合の救急医療など、ゴルフ場開設にともなう行政需要を理由とする税制度の維持を訴えました。それに対して、ひとつひとつ反論を作成しているのが「ゴルフ場利用税廃止運動推進本部」です。

 

ゴルフ場利用税廃止運動推進本部の資料を見ると、ゴミの処理は産廃物処理法に従って有料で処理しているとか、救急や消防の要請が他施設に対して極端に大きいわけではないなど、税を維持するための理屈にことごとく反論しています。つまり、ゴルフ場利用税は税を取るための根拠が成り立っていないけれども、その税収が必要だという市町村からの要望が強いというだけで存続していることになります。時代の流れから、必要ではなくなっている税金や規制を象徴する税金です。

 

税収との関わりからいけば、ゴルフ場からは通常の税収も上がります。本格的なコースが整備されたゴルフ場には、相応の土地面積が必要です。使われていない山や過疎地の土地を利用して造られますが、そうした土地がゴルフ場になると一平方メートル当たりの固定資産税評価額は劇的に変わります。

 

たとえば原野なら14円、山林なら28円のところ、ゴルフ場は4300円にもなるのです。さらに、ゴルフ場は原野や山林と異なり、そこで働く人がいるので雇用を生み出します。雇用される人たちは、通勤を考えると地元の人が多いでしょう。民間に自由に任せる方が、地域の経済活性化にもつながります。

 

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※本連載は渡瀬裕哉氏の著書『無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和』(ワニブックス)から一部を抜粋し、再編集したものです。

無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和

無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和

渡瀬 裕哉

ワニブックス

現在の日本の政治や経済のムードを変えていくにはどうしたらよいのでしょうか。 タックスペイヤー(納税者)やリスクを取って挑戦する人を大事にする政治を作っていくことが求められているといいいます。 本書には「世の中に…

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