(※写真はイメージです/PIXTA)

年々、日本国内における「グローバル教育」の人気は高まる一方です。インターナショナルスクールや「国際」を謳う小中学校に志願者が殺到し、倍率が急上昇。需要に供給が追い付かず、国内のグローバル教育機関は「狭き門」と化しています。そんな状況を尻目に、富裕層の中には、自国の名門校ではなく、あえて「海外の名門全寮制校」を選ぶ保護者も少なくありません。外部からは伺い知れない、超富裕層向けのグローバル教育の実態とは? ※本記事では、受験・教育事情をテーマに小説とコラムを執筆する佐野倫子氏が、バイリンガルエリート教育の最前線をレポートします。

富裕層が「海外の名門全寮制校」を選ぶ、本当のワケ

そこで、これまでは「海外の名門校に留学しないと得られない」とされてきたメリットについて、まずはイギリスを例に見てみましょう。

 

留学生の間でも憧れとともに語られる、「ザ・ナイン」と呼ばれる英国最高峰のパブリックスクール(私立学校)9校は、それぞれ数百年以上の歴史を持つ全寮制の名門男子校です。

 

当然入学のハードルは高く、授業料も高額。海外の富裕層も名門大学進学を見据えて子弟を進学させています。ここで注目したいのは、彼らが自国の名門校ではなく、海外の歴史ある全寮制学校=ボーディングスクールを選ぶ理由です。

 

その答えは、世界的名門大学の実情に精通した方ならば心当たりがあるでしょう。オックスブリッジやアイビーリーグの大学に入学すると、ロウイング・ホッケー・スキー・テニス・馬術・社交ダンス・聖歌隊の経験…幅広い教養を身につけたボーディング出身者と出会うはずです。これはボーディングスクールが全寮制という特色を活かし、多彩なカリキュラムを実践しているからにほかなりません。学力はもちろん、全方位的な活動を評価され、ボーディングスクール出身者が一流大学に進んでいるという理由もあります。

 

また、スイスは昔からいくつもの名門ボーディングスクールを擁していますが、有名なのは年間1200万円以上、世界最高峰の学費を誇るル・ロゼ。夏はロールという街に、冬は高級スキーリゾート地グシュタードにキャンパスを移動し、1日のうち半分はスキーやスノーボードを教わります。招聘されるコーチも一流であることは言うまでもありません。

 

■「在学中の人間関係」は卒後「財政界のフリーパス」に発展

さらにこのようなボーディングスクールが選ばれるのは、外からは伺い知れない理由があります。スイスの名門校ボー・ソレイユ卒業生の父兄にお話を伺いました。

 

「キャンパスは美しい街と自然に囲まれ、世界中から優秀な生徒が集まっています。学校は自由で、生徒は上品、そして勤勉という雰囲気ですね。でもそこはさすがにボー・ソレイユ、実態はハイエンドな世界です。

 

盛装するときの生徒たちはこの上なく洗練されていますし、保護者会などもドレスアップしたカクテルパーティの様相で、家族ぐるみのお付き合いも盛んです。卒業式のあとのパーティでは、そこここでビジネスの打合せが始まります。

 

ボー・ソレイユで培ったつながりは、そのまま経済界・社交界のつながりに発展します。ここまで深い関係を築けるのは全寮制ならでは。ファミリーにとっても素晴らしい経験でしたね」

 

この実情を知っている富裕層が、最高の環境を求め、こぞってこれらの学校に子弟を留学させていたのです。

 

しかし、2022年、ついに日本のその状況に風穴があきます。この歴史あるイギリス式メソッドと、豊かな自然に囲まれたキャンパスの魅力が融合する学校が、なんと日本に上陸したのです。

次ページ2022年、「海外の名門校」が日本国内で開校ラッシュ
天現寺ウォーズ

天現寺ウォーズ

佐野 倫子

イカロス出版

『東京カレンダーWEB』の大人気連載にして、驚異的なPVを獲得した小説「天現寺ウォーズ」初の書籍化。同録は、近年ますます過熱する中学受験を予見し、連載中から物議を醸した「御三家ウォーズ」。この1冊で令和の東京における…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録