
サラリーマンの配偶者のなかには「扶養の範囲」で就労している人が多くいるようです。扶養を外れるぐらい働いて厚生年金に加入するほうが、年金額が増えるためお勧めですが、じつは、就労先の規模・勤務時間・時間給の組み合わせによっては、扶養を外れて自分で国民年金を払わなければいけないのに、厚生年金には加入できないという、最悪な状況になることがあります。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。
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サラリーマンの専業主婦にある「130万円の壁」とは?
最初に明確にしておきたいのは、本稿はサラリーマン(男女を問わず、公務員を含む、以下同様)の専業主婦(専業主夫を含む、以下同様)に関するものであり、自営業者の配偶者には関係ありません。また、夫婦ともに正社員である場合も関係ありません。
さて、20歳から60歳までの居住者は、全員が国民年金に加入しますが、年金保険料の払い方については第1号から第3号までの3つのグループに分かれます。第1号は自営業者等(第2号でも第3号でもない人々)、第2号はサラリーマン、第3号はサラリーマンの専業主婦です。
第1号は、自分で国民年金の保険料を払います。第2号は、給料から厚生年金の保険料を天引きされることで、国民年金の保険料も払ったものとみなしてもらえます。第3号は、配偶者が厚生年金の保険料を払ったことで自分も国民年金の保険料を払ったものとみなしてもらえます。
もっとも、サラリーマンの配偶者が年金保険料を払わなくてはいけない場合が2つあります。ひとつは所得が高い場合。もうひとつはサラリーマンとみなされる場合です。この2つは似ているようで違うものなのですが、混同している人も多いので、要注意です。
自営業やパートなどでサラリーマン並みの収入を得ている場合には、専業主婦として優遇する必要はないので、保険料を払う義務が生じます。その基準として有名なのが「130万円の壁」と呼ばれているもので、年収が130万円以上だと専業主婦とは認められないのです。これが第一の条件です。
「サラリーマン」の定義が極めて複雑、よく注意して
サラリーマンは自分で厚生年金の保険料を払う必要があるのですが、年金保険料等に関しては、パートでも一定の働き方をするとサラリーマンとみなされることになるので、要注意です。これが第2の条件です。
中小企業では週30時間以上働くこと、大企業では週20時間以上働くこと等が条件となっていますが、ルールが複雑なので、細部については勤務先に問い合わせたほうが無難でしょう。ちなみに大企業というのは、現在は501人以上ですが、令和4年10月以降は従業員101人以上の事業所という定義になります。
大企業で週20時間働いて、時給1000円だと、年収は106万円程度になるはずです。この場合、第1の条件である年収130万円の壁には当てはまりませんが、第2の条件に当てはまるため、サラリーマンとみなされて厚生年金に加入することになります。
そうなると、厚生年金保険料を給料から天引きされてしまうので、それを嫌がる人も多いようですが、厚生年金に加入しておけば老後に国民年金に上乗せして厚生年金が受け取れますから、平均寿命まで生きれば元がとれる計算です。
ちなみに1年間加入すると、払う厚生年金保険料は収入(正確には平均標準報酬月額の12倍+標準賞与額の2倍)の9.15%、老後に毎年受け取る上乗せ部分(報酬比例部分)の年金額は現役時代の収入の0.5481%ですから、年金を17年間受け取れば元がとれるというわけです。