(写真はイメージです/PIXTA)

不動産を親子間で安く賃貸する場合、相続税や贈与税にどのような影響を与えるでしょうか? 本記事では、不動産法務に詳しいAuthense法律事務所の森田雅也弁護士が親子間の無償の賃貸が相続税・贈与税に与える影響について解説します。

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親名義のマンションに子が無償で住んでも良い?

たとえば、親がマンションなど複数の不動産を所有している場合に、そのうちの1部屋に子などの親族が住んでいるケースは少なくないでしょう。

 

このような場合では、正規の賃料を支払っているほうが珍しく、多くの場合は無償か、固定資産税相当額程度の低い賃料で賃貸しているものと思われます。

 

このような、無償や固定資産税相当程度の対価での賃貸を、「使用貸借」といいます。子などの親族との間で不動産を使用貸借すること自体は、法律上何ら制限されるものではありません。

 

ただし、所得税や贈与税、相続税など税務上の取り扱いについては、確認しておいた方がよいでしょう。

不動産を親子間で無償で賃貸…「所得税」への影響は?

はじめに、マンションの1部屋などの不動産を親子間で無償で賃貸している場合の、所得税への影響をみていきましょう。

 

■所得税とは

 

所得税とは、毎年1月1日から12月31日までの「儲け」に対してかかる税金です。1年間のすべての所得から制度上認められた一定の所得控除を差し引いた残りの課税所得に税率を適用し、税額を計算します。

 

所得税の計算上、所得の種類は「給与所得」や「事業所得」、「不動産所得」、「一時所得」など、その所得の性質に応じて10種類に分類されており、それぞれその性質に応じて異なる計算方法が定められています。

 

不動産賃貸による収入は、このうち「不動産所得」に該当します。不動産所得の計算方法は、次のとおりです。

 

◆所得税の計算の方法
動産所得金額=総収入金額-必要経費

 

必要経費には、たとえば次のようなものが該当します。

 

◆必要経費

  • 固定資産税
  • 損害保険料
  • 減価償却費
  • 修繕費

 

なお、総収入金額よりも必要経費が多くかかったことによりその年の不動産所得が赤字になった場合には、その赤字金額は、他の所得の黒字から差し引くことが可能です。これを、「損益通算」といいます。

 

ただし、不動産所得の金額の損失のうち、次に掲げる損失の金額は損益通算の対象とならないとされています。

 

◆損益通算の対象にならない損失

  • 別荘などのように主として趣味や娯楽、保養、鑑賞の目的で所有する不動産の貸付けに係るもの
  • 不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入した土地等を取得するために要した負債の利子に相当する部分の金額

 

こうしたものについてまで損益通算を認めてしまえば、たとえば自分や家族が使うために買った別荘を年に数回程度のみ人に貸して不動産所得とすることで、減価償却費や維持管理費などを経費とし、これを他の所得から差し引くなどの不当な課税逃れができてしまうためです。

 

■無償での親子間賃貸は所得税には影響しない

 

子に無償や低額で不動産を賃貸した場合には、その不動産に係る不動産所得は赤字になることが多いでしょう。

 

そのため、親が不動産を購入してその不動産を子に通常よりもかなり安く賃貸することでわざと赤字を発生させ、その赤字を他の所得と損益通算することで節税ができると考える方もいるかもしれません。

 

しかし、子など生計を同じくする親族へ不動産を貸した場合にかかった費用は「家事費」に該当するとされ、原則として必要経費に算入することは認められません。

 

購入した不動産を無償で子に貸したからといって、節税になるわけではないと考えておきましょう。一方、親から無償や低額で不動産を借りたからといって、子に所得税が発生することはありません。

 

なお、子がその借りた物件を自分の居住用ではなく事務所や店舗など事業をする目的で利用していた場合には、親との生計が同一である以上、その親に支払った賃料は原則としてその事業の必要経費とすることができません。

 

その代わりに、親が支払った固定資産税や物件の減価償却費などを経費に算入できる場合があります。このあたりは判断が難しい場合が多いため、個別の事情に応じて税理士などの専門家へ相談すると良いでしょう。

 

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本記事はAuthense不動産法務のブログ・コラムを転載したものです。

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