
マイホームの購入時は、だれもが幸せな未来を思い描いているのではないでしょうか。しかしその後、失職や離婚といった想定外の事態が起こってしまうと、住宅ローンは「抱えきれない人生の負荷」となってのしかかることがあります。不動産業界で数多くの任意売却を手掛けてきたプロフェッショナルが警鐘を鳴らします。
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住宅ローン破綻と離婚の「密接な関係」
筆者はこれまで住宅ローン破綻に関するご相談を300件以上受けてきましたが、そのうち実に約3割は離婚が絡んでいます。家や住宅ローンと離婚は密接に関係していることが多く、離婚して夫婦の縁は切れても、家に関する関係は切れないことが珍しくありません。
家を購入するときに、離婚を想定して購入する方はほとんどいないと思います。しかし、離婚リスクを想定していなかったばかりに、人生が大きく狂ってしまった方も少なくありません。本稿では具体的なトラブル事例を交えながら対策をご紹介していきたいと思います。
離婚後10年、銀行から「催告書」が届いた女性
Aさんは10年前に元夫と離婚して、子どもと一緒に実家で暮らしていました。
結婚した直後に元夫名義で家を購入し、Aさんは元夫の住宅ローンの連帯保証人となっていました。離婚する際には、「住宅ローンは元夫がひとりで最後まで払う」という条件の公正証書を作成していたので、家のことはなにも考えていなかったといいます。
しかし、離婚して10年が過ぎたころ、突然銀行から封書が届きました。その内容は、「元夫が住宅ローンの返済をしなかったため、連帯保証人であるAさんが、代わりに一括で支払うように」というものでした。Aさんはその催告書を見た途端、頭が真っ白になってしまったそうです。
自宅は任意売却、元夫が信用できず自己破産を選択
Aさんは慌てて元夫に連絡を取りましたが、「もう払えなくなった。すまない」といわれ、それ以上どうすることもできませんでした。
もちろんAさんにも、元夫の代わりに住宅ローンを支払う資力はありません。結局、元夫は自宅を任意売却することにしましたが、それでも住宅ローンを返し切ることができず、400万円以上の残債が残ってしまいました。
この残債については、元夫が払っていくことで話がつきました。しかしAさんは、元夫をまったく信用できません。元夫が返済できなければ、自分がこの負債を抱えていかなければならないと思うと不安でたまらず、精神的に参ってしまいました。
そのため、Aさんはやむを得ず自己破産を選択しました。