(※写真はイメージです/PIXTA)

私立高校の教諭としてキャリアを積んだ、株式会社対話教育所の代表取締役・小山英樹氏。本記事では、「偏差値ヒエラルキー」に焦点を当て、解説していきます。

「ワンランク上の偏差値の学校に…」ではなく

●子どもたちが大人になる20年後30年後をイメージして

もう一つ読者の先生方に伝えたいこととして、ビジョンの持ち方があります。教師はその責任感から、どうしても子どもたちの直近の未来に目を向けがちです。

 

宿題を出さない子には明日こそ宿題を出してほしいし、英語が苦手な子には今学期中に英語を克服してほしい、生活態度の乱れている子には規則正しい生活をしてほしい、成績の良い子もワンランク上の偏差値の学校目指して頑張ってほしい――。

 

しかも、自分が関わることのできる1年や2年といった短い期間で変わってくれることを期待するものです。もちろん、それは大事なことです。でも一方で、もっと遠い未来を見る目も重要です。観点を変える、つまりReframingです。

 

観点が変わると、教育コミュニケーションもまったくちがったものになります。

 

児童「先生、ほうきが当たって、Aさんの絵が破れました」

教師「ダメじゃない。何してたの? 振り回してたの? Aさんには謝った? じゃ、ちゃんと謝ろうね。謝れたらもう一度報告に来て。もう掃除中に遊んじゃダメよ。いい? 分かった? 分かったなら、やることを自分の言葉で言ってみて」

児童「Aさんに謝ります。謝ったら、先生に報告します。そして、明日から、掃除中遊ばないようにします」

 

これが直近の未来に目を向けた指導です。遠くの未来を見ると、たとえばこうなります。 

 

児童「先生、ほうきが当たって、Aさんの絵が破れました」

教師「そうか。もう一度言ってほしいんだけど、今度は、あなたがしたことと、起こったことを分けて言ってみて」

児童「掃除中に、ほうきで野球をした。ほうきが絵に当たって破れた」

教師「うん、ありがとう。もう一度、あなたがしたことと、自動的に起こったことを区別して言ってみよう」

児童「掃除中に、ほうきで野球をした。ほうきを絵に当てた。で、破った」

教師「そうか当てて破ったか。よく言えたね。すごいよ。ありがとう。自分のしたことを『した』として言えるあなたは、かっこいいよ。尊敬する」

 

このあと、児童の気持ちを聴き、どうしたいかを聴く。そして最後に「あなたは、どんな人になりたい?」と聴き、「きっとなれるよ。すでにそうだよ」と未来承認・存在承認する。そんな教育コミュニケーションになります。

 

人間はそんなに簡単に変われるものではありません。教師が反省させて行動を変えさせたとしても、すぐ元に戻ります。それを繰り返すよりも、過去をしっかり認めて完了すること、そしてその瞬間から遠くまで続く未来をスタートすることが大切だと私は思うのです。

 

その場で変わらなくてもいいのです。その子が将来、試練や苦難に出会った時、それを「成長モード」で受け止めて乗り越えさえできれば、それでいいと私は思います。

 

蒔いた種が明日に花を咲かせることはありません。彼らがいろんな出会いや気づきを経験して、自分らしい花を咲かせることができたとき、初めて教師はその人生の一部に関われたことを感謝するのだと思います。ですから、読者のあなたにはどうか、20年後30年後の未来に目を向けてほしいと思います。

 

 

小山 英樹

株式会社対話教育所 代表取締役

一般社団法人日本教育メソッド研究機構(JEMRO) 代表理事

一般社団法人日本青少年育成協会(JYDA) 会員

※本連載は、小山英樹氏の著書『教室改革』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

教室改革

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小山 英樹

幻冬舎メディアコンサルティング

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