
長引く不況やコロナ禍にあって、老後不安を募らせている人は少なくありません。しかし、私たちの老後には公的年金があります。一部、公的年金について危機感をあおるような報道もありますが、専門家から見て正しい意見とはいえません。とはいえ、公的年金が設計された当初から社会は大きく変化しています。メリットを最大限享受するにはどうするべきか、経済評論家の塚崎公義氏が検証していきます。
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公的年金は、老後の二大リスクと戦える「最強の柱」
公的年金は、老後資金の最強の柱です。標準的なサラリーマン夫婦は65歳から毎月22万円程度が受け取れますし、自営業者も年金保険料をきちんと払っていれば毎月13万円程度が受け取れますから。
公的年金は、どれだけ長生きしても生きているあいだは受取り続けることが可能ですし、インフレが来れば原則としてインフレ分だけ受取額が増えるので、長生きとインフレという老後資金の最大のリスクにきちんと対応してくれるわけです。
少子高齢化によって支給額が少しずつ減ってしまうというリスクはありますが、それでもほとんどの専門家は公的年金が老後資金の最強の柱だと考えていると思います。
70歳まで待てば、毎回の受取額が42%増える
公的年金は、65歳から受け取るのが普通ですが、65歳と決まっているわけではなく、60歳と70歳(2022年4月以降は75歳)の間で選ぶことができます。当然ですが、早く受け取り始めれば毎回の受取額が少なくなり、遅くまで待ってから受け取り始めれば毎回の受取額が多くなるわけですね。
たとえば70歳まで待ってから受け取りはじめると、毎回の受取額が42%増えるので、標準的なサラリーマン夫婦は年金だけで暮らせるでしょう。自営業者夫婦も、毎月13万円の1.42倍あれば、最低限の生活は公的年金だけで可能かもしれません。
上記のように、公的年金は「長生きリスク」と「インフレリスク」に備えることができるので、公的年金を充実させることは、老後資金を考えるうえで大きな安心材料を手にすることになるわけです。
計算上、平均寿命まで生きれば元は取れるが…
70歳まで待つと毎回の受取額が42%増えるということは、82歳まで、つまり平均寿命まで生きれば元が取れる計算になります。
ただ実際には、人によっていろいろなことが起こり得ます。たとえば、毎回の年金受取額が増えたことで累進課税の税率が上がってしまったり、住民税非課税限度を超えてしまって住民税が課税され、その結果として非課税者に認められている恩典が受けられなくなってしまったりしかねません。
あるいは、配偶者が加給年金を受け取れなくなってしまう可能性もありますから、一度ファイナンシャルプランナーに相談してみるといいかもしれません。