石川啄木像(PIXTA)

「前田利家は人件費をケチりすぎて謀反された」「樋口一葉は愛人手当で食いつないでいた」……作家・歴史エッセイストの堀江宏樹氏は著書『偉人の年収』(イースト・プレス)のなかで、偉人たちの生々しすぎるお金事情を暴露している。歴史書で読んだ「憧れのあの人」の裏側、本連載で一つずつ追っていこう。今回は教科書でもおなじみの「石川啄木」。

「神様少しだけ身体を壊して」から伺える啄木のヘタレっぷり

「もし新聞社に真面目に通っていたら」という仮定の話になりますが、新聞小説『鳥影』のほかに「買い叩かれた」何作品かの小説の原稿料も入れれば、明治41年、東京1年目の啄木の年収は最低でも450円(=450万円)近くはあったでしょう。裕福とはいえませんが、それなりに暮らせたはずなのに、そうはなりませんでした。

 

翌年も似たようなものです。明治42年(1909年)4月10日の『ローマ字日記』には、「神よ、わたしの願いは これだけだ、どうか、からだを どこか 少しこわしてくれ(略)病気さしてくれ!」と、ダメ人間の魂の叫びが記されています(原文はローマ字。啄木は「妻に見つかるとやばい内容しかない」との理由で、自身の心情をローマ字で吐露した)。

 

新聞社の仕事がイヤなので休みたい。だから神様少しだけ身体を壊してください、軽い病気にさせてください……という啄木の脳裏からは、とうの昔に1,373万円弱の借金の存在は消え去っていたのでしょう。

 

 

堀江 宏樹

作家・歴史エッセイスト

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