マネーストック:市中の通貨量は緩やかな増勢を維持
1月13日に発表された昨年12月のマネーストック統計によると、金融部門から市中に供給された通貨量の代表的指標であるM2(現金、国内銀行などの預金)平均残高の伸び率は前年比3.73%(前月は3.99%)、M3(M2にゆうちょ銀など全預金取扱金融機関の預貯金を含む)の伸び率は同3.38%(前月は3.55%)と、ともに低下した(図表9)。伸び率の水準はそれぞれ2020年4月以来の低水準にあたる。
銀行貸出の伸び率低迷や日本の貿易収支赤字化が伸び率の低下に影響しているとみられる。
M3の内訳で見ると、主軸である普通預金等の預金通貨(前月7.6%→当月7.3%)の伸び率低下の影響が大きかった。また、CD(譲渡性預金・前月10.6%→当月6.2%)の伸び率低下も押し下げに働いた。
一方、現金通貨(前月3.3%→当月3.4%)が伸び率をやや拡大したほか、定期預金などの準通貨(前月▲3.2%→当月▲3.0%)の伸び率がマイナス幅を縮小したことが支えとなった(図表10・11)。
また、広義流動性(M3に投信や外債といったリスク性資産等を加算した概念)の伸び率も前年比4.62%(前月は4.81%)と2カ月連続で低下した(図表9)。
内訳では、既述の通り、M3の伸びが低下したうえ、規模が大きい金銭の信託(前月13.8%→当月13.6%)、投資信託(私募やREITなども含む元本ベース、前月-0.5%→当月-1.2%)、国債(前月-1.3%→当月-2.2%)の伸び率がそれぞれ低下したことが影響した(図表11)。投資信託の残高は今年の春以降、伸び悩みが続いている。
ただし、季節調整値の前月比でみた場合では、M2、M3、広義流動性ともに伸び率は小幅なプラス圏で推移しており、市中の通貨量は実態として緩やかな増勢が続いている(図表12)。
上野 剛志
ニッセイ基礎研究所
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