(※写真はイメージです/PIXTA)

「社長の役員報酬は2,000万円がひとつの目安」といわれています。多くのオーナー社長が一定の金額を超えて役員報酬を増やさない理由について、税理士法人グランサーズの代表である黒瀧泰介税理士が解説します。

法人にお金を残す場合、最終的にどう受け取ればいい?

オーナーの財布と会社の財布がほぼ一体となっているといっても、将来的な世代交代や事業譲渡などを考えると、どこかで法人のお金を社長個人に移す必要がでてくる場合があります。

 

しかし、社長個人に移すタイミングで役員報酬として渡してしまっては、それまでの節税努力が無駄になってしまいます。では、どのようにすればよいのでしょうか。

 

役員報酬を抑えて、法人にお金が多く残す場合、この残したお金をより軽い税負担で社長個人に移すには社長の退職金で受け取る方法がおすすめです。

 

退職金は、退職所得控除が受けられ、さらに「2分の1課税」になるなど、通常の役員報酬や賞与で受け取るより、税制的に優遇されています。また、退職金の原資は、「小規模企業共済」や「経営セーフティ共済」などを利用して、節税しながら退職金を積み立てすることができます。

 

例えば、小規模企業共済では、掛金の全額を所得控除できます。

 

この図表4は、小規模企業共済による年間の節税額の一覧表です。

 

[図表4]小規模企業共済による年間の節税額の一覧(引用:中小機構)
[図表4]小規模企業共済による年間の節税額の一覧(引用:中小機構)

 

課税所得が1,000万円で月々の掛金が7万円であれば、年間の節税効果は表の右下の「367,000円」です。

 

この条件で20年間積み立てて、退職金として受け取れば、20年間の節税効果だけで700万円以上になります。さらに、納付した額よりも多い金額を受け取ることができます。

 

<課税所得1,000万円/小規模企業共済掛金 月7万円/20年積立>

節税効果:年367,000円×20年=734万円

実際の納付額:7万円×12ヶ月×20年=1,680万円

受け取り予定額:約1,860万円 退職金に係る所得税(復興税含む)、住民税:約118万円

 

最終的に

 

退職金1,860万円+20年間節税効果734万円-20年分掛金1,680万円-退職金に係る税金118万円=796万円

 

およそ800万円ほどお得になる計算になります。

 

税負担を考慮した適切な役員報酬を設定し、法人利益を残したうえで、最終的に退職金として受け取るという形が、オーナー企業の社長にとっては、もっとも無駄なく手元にお金を残せる方法といえます。

まとめ

・役員報酬の設定では、法人の利益の状況も考慮に入れ、個人・法人どちらで税金を支払った方が有利になるか比較します。

・法人実効税率は約25%~約35%です。

・役員報酬1,000万円で法人の利益がゼロの場合、個人の年収を減らして、少し法人に持っていったほうがいい場合もあります。

・役員報酬1,500万~2,000万円が、個人・法人どちらで税金を支払った方が有利になるかの分かれ目になります。

・役員報酬3,000万円に設定すると、法人税より所得税の方が確実に税負担が重くなります。

 

今回のシミュレーションでは、あくまでオーナーの財布と会社の財布がほぼ一体となっている企業についての計算なので、それ以外の企業については異なってきます。

 

例えば、雇われ社長の企業の場合は、給与は青天井で高いほうが望まれます。

 

オーナー経営であったとしても、社長の考え方や資産等の状況によって、設定すべき役員報酬額は変わってきますので、業績の見通しをキッチリした上で、どのくらいの税金がかかるかを税理士や社労士などと一緒にしっかり計算して決めていく必要があります。

 

また、役員報酬は原則として、年に1回しか変えることができません。

 

期中に減額したいといっても認められませんので、1年の業績をシミュレーションしながら検討していきましょう。

 

 

【この記事を動画で見る】

なぜ年収2,000万円以上給料を取らない社長が多いのか?節税効果最大の役員報酬額

 

 

黒瀧 泰介

税理士法人グランサーズ共同代表 公認会計士・税理士

 

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