(写真はイメージです/PIXTA)

相続があったにも関わらず、登記が故人のままになっている土地。「未登記土地」や「所有者不明土地」などといわれますが、どのような問題があるのでしょうか。相続に詳しいAuthense法律事務所の堅田勇気弁護士が解説します。

要らない土地「だけ」を相続放棄することは可能?

とはいえ、自宅から遠く売却も容易ではないような土地など要らないという場合もあるでしょう。そうした場合、不要な土地だけを相続放棄することはできるのでしょうか?

 

現存する相続放棄の制度では、要らない土地だけを放棄することはできません。なぜなら、この相続放棄の手続きをする効果として、始めから相続人ではなかったこととなるためです。そのため、相続放棄すると、プラスの財産もマイナスの財産も一切相続できなくなってしまいます。

 

相続放棄の制度では、要らないものだけを選んで放棄できるわけではないことを覚えておいてください。

 

また、要らない土地をその土地の所在する市町村などに寄付したり、遺言書で遺贈したりすればよいと考える人もいることでしょう。

 

この方法で解決ができる可能性はゼロではありませんので、市町村へ問い合わせてみる価値はあります。

 

しかし、この場合にも、受け取ってもらえる可能性はあまり高くありません。

 

相続人が誰も要らないような土地は価値が低いことが多く、また地理的にも使い勝手がよいケースは稀でしょう。そのため、管理費がかさんでしまうだけという場合も多いはずです。

 

市町村としても、寄付や遺贈をされたからといって受け取る義務があるわけではありません。要らないからといって、市町村に無理やり押し付けるようなことはできないと思っておいてください。

 

このように、要らない土地だけを放棄するようなことはほとんど不可能です。

 

■要らない土地だけ放棄できる制度の制定も…活用は難しい

 

しかし、前述した相続登記の義務化に伴い、要らない土地だけを放棄するための法律が新たに制定されました。

 

その名称は、「相続土地国庫帰属法」といいます。その名の通り、相続をした土地を国にもらってもらえる制度です。

 

しかし、これは決してバラ色の制度ではありません。

 

なぜなら、この制度で国にもらってもらえる土地には、権利関係に争いがないことや土壌汚染がないこと、更地であることなどといった制限があるほか、10年分の土地管理費相当額の負担金をおさめることが要件とされているためです。

 

とはいえ、要件を満たすのであれば、不要な土地の扱いに頭を悩ませるより、この制度を使った国への寄付を検討することも1つの手でしょう。

まとめ

相続登記は面倒に感じるかもしれませんが、故人名義のまま放置して未登記土地となってしまうと、いざ名義を変えようとした際の手続きが非常に煩雑となってしまいます。

 

時間の経過とともに問題が解決するどころか、問題はより複雑になってしまう可能性がとても高いのです。

 

相続登記が義務化された改正法の施行も間近に控えていますので、相続が起きた際には速やかに名義変更を行い、未登記のままとしないようにしましょう。

 

未登記の土地については何十年も前の相続から放置されてしまっているものも多く、相続人を確定するための資料を収集することだけでも非常に手間がかかります。

 

そのうえ、会ったことも聞いたこともない多数の相続人と遺産分割協議を行うことは労力がかかるうえ、精神的な負担も大きくなります。

 

土地の相続にあたり、相続人同士の話し合いがまとまらず困っている場合や、未登記土地の相続において相続人の捜索や他の相続人との交渉に困った際には、ぜひ弁護士へご相談ください。

 

 

堅田 勇気

Authense法律事務所 弁護士

 

 

【関連記事】

税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

恐ろしい…銀行が「100万円を定期預金しませんか」と言うワケ

 

親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

 

「儲かるなら自分がやれば?」と投資セミナーで質問すると

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録