(写真はイメージです/PIXTA)

世界的にコロナ禍からの経済活動再開が進み、インフレが進行した昨年。本記事では、ニッセイ基礎研究所の上野剛志氏が昨年の相場を振り返り、2022年の金価格の相場展望を予想します。 ※本記事は、ニッセイ基礎研究所の金融市場・外国為替(通貨・相場)に関するレポートを転載したものです。

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    日銀金融政策(12月)

    ■(日銀)資金繰り支援策の一部延長を決定

     

    日銀は12月16日~17日に開催した金融政策決定会合において、3月末に期限を迎える資金繰り支援策について、一部の延長を決定した。金融機関貸出のバックファイナンスであるコロナオペについて、主に中小企業向けであるプロパー融資と制度融資分を半年間延長した(制度融資分は付利とマクロ加算残高への算入を引き下げ)。

     

    一方、同オペの一部である大企業向け等の民間債務担保分、同じく大企業向けであるCP・社債買入れの上限20兆円までの増額措置は期限通り終了することとした。その他資産買入れや長短金利操作などの金融緩和の大枠については変更なしであった。

     

    会合後の総裁会見において、黒田総裁は今回の資金繰り支援一部延長の理由について、対面サービスなど一部の資金繰りに厳しさが残っていることを挙げ、「なるべく早く延長を打ち出すことが、感染症の影響を受けやすい中小企業やそれを支える金融機関の安心感につながる」と説明。

     

    原材料高に伴う一部物価上昇の金融政策への影響については、「単に物価が上がればよいということではなく、賃金、物価がともに上昇していく中で、物価上昇率が2%に収斂していくことが望ましい」としたうえで、「一時的な要因やエネルギーを除いたベースの物価上昇率をみても+0.5%程度と目標の2%とはなお距離がある」、「現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていくという方針」などと緩和継続姿勢を強調した。

     

    また、円安の影響については、「円建ての原材料コストを押し上げる一方、輸出金額あるいは海外子会社の収益を押し上げる」としたうえで、「これまでのところわが国経済にプラスに作用している」と前回の見解を踏襲した。「円高になり輸入する財の価格が下がったとしても、賃金、物価その他様々な要素に影響が出るので、家計に必ずプラスになるわけでもない」とも言及している。

     

    縮小傾向にある国債買入れについては、適切なイールドカーブの実現に必要な分だけ購入していると述べたうえで、「金融緩和を縮小している、もしくは正常化のプロセスに入っているといったことは全くない」と正常化観測を一蹴。

     

    ETFの買入れ大幅縮小についても、「メリハリをつけた形で購入していくということが一番適切」としたうえで、「今後ともリスク・プレミアムが上昇するようなときには、もちろん思い切って大幅な買入れも行う」と付け加えた。

     

    その後、23日の経団連審議員会で行われた黒田総裁講演では、円安の影響に対する見解についてより詳しい説明があった。「基本的にプラスの効果の方が大きい」としつつも、「円安が物価上昇を通じて家計所得に及ぼすマイナスの影響も強まっている可能性がある」、「為替円安にはプラス、マイナス両面の影響があり、またそれらは個々の経済主体の事業内容や支出構造によって現れ方が様々であることには、十分な留意が必要」と、従来より円安の負の側面に留意する姿勢を見せた。

     

    その後、27日に公表された「金融政策決定会合における主な意見(12月16~17日開催分)」では、金融支援策(特別プログラム)の縮小・終了に関して、「(今後)特別プログラムを全て手仕舞いすることになったとしても、(中略)金融緩和の縮小を意味するものでは全くない」や、「今回の措置(金融支援策の縮小のこと)により短期的にマネタリーベースが減少しても、長期的な増加トレンドは維持されるため、(マネタリーベースの増加をコミットしている)オーバーシュート型コミットメントとは矛盾しない」といった意見がみられた。

     

    ■今後の予想

     

    今後の金融政策に関しては、日銀は大枠として、長期にわたって現行の金融緩和を続けると予想している。日本において原材料コストが販売価格にある程度転嫁されていくとしても、物価上昇率が2%に達する可能性は低いためだ。またそうしたコストプッシュ型のインフレは日銀の目指す姿ではないため、出口戦略の開始はほど遠い。

     

    一方でマイナス金利の深掘りは金融機関収益などへの副作用の増大が避けられないうえ、円安に拍車をかけて日銀批判に繋がる恐れもあるため、物価上昇率を押し上げるべく追加緩和を実施するという手も取りづらい。

     

    従って、日銀は「強力な金融緩和を粘り強く続けていく」という建前を掲げながら、現状維持を続けざるを得ない。金利の膠着が長期化するなど副作用の緩和が十分に見られない場合や、円安がさらに進んで世論の悪化や政治からの是正要求が強まってくるような場合には政策を多少調整する可能性が出てくるが、緩和の大枠に変化はないだろう。

     

    一方、今後はコミュニケーションや情報発信がより重要になってくる。引き続き「悪い円安」への懸念や日銀の対応に関する説明が求められるほか、金融支援策縮小などに伴う今後のマネタリーベース減少とオーバーシュート型コミットメントとの整合性についての明確な説明も求められるだろう。対話に失敗すれば、正常化観測の台頭によって市場が不安定化する恐れがある[図表9][図表10]。

     

    日銀のCP・社債保有高/コロナオペ(中小企業向け)
    [図表9]日銀のCP・社債保有高
    [図表10]コロナオペ(中小企業向け)の条件見直し

     

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    本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
    ※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2022年1月7日に公開したレポートを転載したものです。

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