(写真はイメージです/PIXTA)

本記事では、ニッセイ基礎研究所の上野剛志氏が21年1~10月累計の国内投資家による外国債券投資の傾向を分析し、2022年における外債投資の展望を予想します。 ※本記事は、ニッセイ基礎研究所の金融市場・外国為替(通貨・相場)に関するレポートを転載したものです。

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    2022年における外債投資の展望

    最後に、今年の外債投資の動向を考えると、昨年に続いて海外の金利とインフレの動向がポイントになる。

     

    まず、世界の中心的な金利指標である米国の国債利回りは、FRBによる緩和縮小と段階的な利上げに伴って緩やかに上昇すると見込まれる。これに伴って、米国以外の国々の金利にも上昇圧力がかかるだろう。海外金利が上昇すれば、先々のインフレや金利上昇リスクに対するバッファが厚みを増すことになる。

     

    一方、海外のインフレについては、コロナの感染が抑制されて強い行動制限が回避されることによって供給制約が緩和されるにつれて、次第に落ち着いてくることが予想される。

     

    従って、外債投資の観点では、金利上昇による投資妙味向上とインフレ懸念の緩和が追い風になる一方で、先々の金利上昇リスクと米利上げに伴うドルヘッジコストの上昇が重荷となる形となり、国内投資家による外債投資額(特にヘッジ無しのオープン外債)は昨年からやや持ち直すと見ている。

     

    また、来年の外債投資を考えるうえでは、もう一つ注目すべき要素がある。それは、政府によって設立された大学ファンドの運用開始だ。同ファンドの資産規模は約10兆円で、今年度内に運用が開始される見込みとなっている。運用資産の割合については、グローバル株式65%、グローバル債券35%を目安とする方針が示されている。外債の割合や投資の時期・ペースは今のところ不明だが、同ファンドによって、今後、外債投資の追加的なフローが兆円規模で発生する可能性がある。

    ※「世界と伍する研究大学の実現に向けた大学ファンドの資金運用の基本的な考え方」(令和3年8月総合科学技術・イノベーション会議)


    以上の通り、昨年の国内投資家による外債投資は失速した。外債投資における為替ヘッジの有無の割合は不明だが、ヘッジをかけないオープン外債の場合には、円売り外貨買い取引を通じて為替市場における円安圧力になる。

     

    従って、昨年、国内投資家の外債投資が失速したことは、為替市場において円安圧力の低減として働いた可能性が高い。一方、筆者の見立て通り、今年の外債投資がオープン外債を中心に持ち直せば、円安をサポートする材料となる。

     

     

    上野 剛志

    ニッセイ基礎研究所

     

     

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    本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
    ※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2022年1月4日に公開したレポートを転載したものです。

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