(※写真はイメージです/PIXTA)

新型コロナウイルスの発生から今年で2年が経過しました。“コロナ禍”が長引くにつれて、コロナ感染症そのもの以外にも多くの問題が浮き彫りになっています。なかでも、今、医療界で問題視されているのは、コロナが「がん(癌)」の診断や治療に与える影響です。一体どういうことでしょうか? 内科医の齋藤宏章氏が解説します。

検診を受ければ「治る段階」で見つけられる可能性大

では、がん検診に参加する人が減少し、がんの診断者数が減少していることは私たちにとってどういう問題になるのだろうか? コロナの脅威が冷めやらぬなかに、無理をしてがん検診に参加する必要があるだろうか、と思う人もいるかもしれない。

 

がん検診は症状が出る前に、早い段階でがんを見つけて治すことを目的に行なわれている。裏を返すと、検診を受けていれば見つかったがんは、症状が出てから見つかっても治らない可能性が高くなる。今回取り上げている5つのがんに関しては、がん検診のように無症状で見つかった場合、症状が出て見つかる場合に比べて早期の段階、治る段階で見つかる割合が高い。がんが見つかるのは怖いことだが、検診で見つけられた場合は、症状が出てから見つけられる場合に比べて、メリットが大きい場合が多いのだ。

 

■診断が1年以上遅れた場合、進行がんの割合が7%上昇するという推計も…

検診を受けるのは大事とわかっていても、とはいえすぐには受けたくないし、どのくらい検査までの期間を伸ばすのはいいの?という意見もあるだろう。一概に答えのないテーマであるが、コロナの影響でがんの診断が遅くなり、病気が進行するのではないかということは各国でシミュレーションされている。

 

たとえば、2021年初頭に報告された米国の大腸がんに関する調査では、大腸がん検診で診断が遅れずに見つかった場合、74%が早期の段階(ステージ1、2)で26%が進行した状態(ステージ3、4)と想定され、1年以上の診断の遅れがある場合には、進行した状態は全体の33%まで増加するだろう、という推計がなされている(※5)

 

このような推計は人種や地域が違えば当てはめることはできないが、時間をあけるというのはリスクであることは知っておく必要がある。

 

※5 Luigi R et al. Impact of SARS-CoV-2 Pandemic on Colorectal Cancer Screening Delay: Effecton Stage Shift and Increased Mortality. Clin Gastroenterol Hepatol 2021

がん検診を受けるべきタイミングは?

では私たちはどうすれば良いのだろうか。まず、検診の案内がきた場合は受けることを考えてほしい。検診は今を逃すと損をするかもしれない。今は少し…という人はコロナが収束したら忘れずに検診を受けることを思い出してほしい。もともと持病がある、病院にかかっている人は医師に相談するのも一つの手だ。

 

私も「検査を受けたほうが良いですか」という質問を受けることがある。そういう時には、その方の持病や日頃の生活習慣や年齢、直近の検査の状況などを考慮しながら、検診や検査を受けたほうが良いかどうかを相談をしている。

 

コロナ禍では、がん検診以外にもこれまで普通に行ってきたことを色々とバランスを取りながら考えなければならなくなっている。大変な時勢だからこと、私はコロナ禍になってからは特に、普段接する患者さんや周りの友人、家族にも健康状態や、検診を受けているかどうかを呼びかけるようになった。ぜひあなたの大切な人にも、「最近どう?」と聞いてみてはいかがだろうか。

 

 

齋藤 宏章

仙台厚生病院消化器内科 医師

 

【関連記事】

税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

恐ろしい…銀行が「100万円を定期預金しませんか」と言うワケ

 

親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

 

「儲かるなら自分がやれば?」と投資セミナーで質問すると

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧