非正規雇用者は正規雇用者と比較して「仕事満足度」が高い一方で、「低年金の単身高齢者増加」という深刻な問題を引き起こす。ここでは「受け入れざるを得ない日本の未来」について、リクルートワークス研究所研究員の坂本貴志氏が解説していく。 ※本連載は、書籍『統計で考える働き方の未来 ――高齢者が働き続ける国へ』(筑摩書房)より一部を抜粋・再編集したものです。
生活費「月15万円」の単身高齢者…「生活保護受給者」増加で日本社会に暗雲が立ち込める (写真はイメージです/PIXTA)

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「非正規雇用の拡大」は、未婚化を引き起こすが…

ほとんどの非正規雇用が必要な雇用といえる一方で、その職に就く人のうちのおよそ4人に1人が問題を抱えていることも事実だ。

 

就労と結婚行動には強い関係があり、非正規雇用の拡大が未婚化を引き起こしている可能性は否めない。1990年代以降に進行した雇用の不安定化が、少子化の進展に拍車をかけているのである。少子高齢化が日本社会に与える甚大な影響を考えれば、非正規雇用問題は国家を揺るがす重大課題であると考えられる。

 

未婚非正規に代表される人たちの能力をいかに開発し、戦力化していくか。その解決策は、一見するとそう難しくないようにも思える。すなわち、今いる非正規雇用者を強制的に正規化するか、あるいは一昔前のように新卒一括採用ですべての人を正社員として雇えばよいのかもしれない。

 

しかし、事態はそう簡単ではないだろう。データをみると、非正規雇用者自身が正規雇用の働き方を必ずしも望んでいない姿が浮かび上がってくる。

 

労働力調査によると正規の職につきたいのに非正規の職を余儀なくされている人は200万人超しかおらず、多くの非正規雇用者が自らの都合でその職に就いているのである。

 

正規雇用の仕事はつらい。長時間労働は日常茶飯事で、転勤によって急に土地勘のない場所で仕事をさせられることもある。終身雇用のもと、社内の難しい人間関係を避けて通ることはできない。

 

実際に、正規雇用者と非正規雇用者の仕事に対する満足度を分析してみると、明らかに非正規雇用者の仕事満足度が高くなる。彼らの多くは正規雇用という煩わしい働き方をそもそも望んでいないのである。