※写真はイメージです/PIXTA

中国共産党は2021年11月、第19期(届)第6回中央委員会全体会議(6中全会)を開催し、党史上第3のいわゆる「歴史決議」を採択した。2012年以来の習近平国家主席の功績を称賛し、「習近平新時代」を強調。欧米や日本の専門家やメディアの間では、本年秋に開催予定の第20回党大会(20大)での習氏の国家主席3期目続投が確定したとの見方が支配的で、一部に終身国家主席の可能性も出てきたとの見方まである。ただ決議からは、必ずしもそれだけではない微妙なニュアンスが読み取れる。

習氏にとっての不安材料

少数だが、歴史決議は習氏の敗北、あるいは少なくとも習氏が望んだものにはならなかったとの見方もある。上述の論点にも関係するが、①第1、第2の歴史決議の手法に倣い、過去の歴史を改ざんして自己を権威付けようとしたが党内反対でかなわず、②毛鄧習3段階論ではなく、江、胡も含め各指導者が然るべき部分で言及される5段階論になった、③現指導者への言及が最も多いのは当たり前などの理由による。

 

しかし、こうした見方は主に反中(反習)ありきの華僑専門家から出ている点、割り引く必要がある。そもそも今回、自らの地位を確実にするために歴史の是非を論じ指導者を攻撃する必要はなく、また「新時代」「習思想」「4つの意識」などみな数年前から繰り返し言われてきたことで、新たなものはなにも付け加えられていないという点で、決議は発表する必要性、必然性はなかったもの。それを建党百周年を利用して発表にこぎつけたこと自体、習氏としては一定の勝利だろう。

 

ただ以下の通り、習氏にとって不安材料が完全に消えたわけでもない。

 

①新華社の「決議誕生記」と題する長文記事は、決議が民主的プロセスを経て策定されたことを強調する意図だろうが、意見募集の段階で各地区・部門から約1600の意見が寄せられ初稿を547か所修正、さらに6中全会で草案に対し、「参加した同志」から138の意見が出され、22か所に及ぶ修正が施されたと報道。図らずも、党内意見の不統一を暴露。全会終了後、文言調整で揉めたのか、決議全文公表までに5日間を要した。

 

②通常こうした党の重要文書が出ると、直ちに軍部が大々的に支持表明するが、今回は解放軍報などの報道は抑え気味。

 

③6中全会直後の党政治局会議は「国家安全戦略(2021〜25年)」を議題にし「政治安全」、つまり政権安定を最重要に位置付け。趙楽際常務委員(習氏側近かは見方が分かれている)が人民日報に6200字の6中全会に関する署名入り長文論評を発表。「偉大な自我革命が偉大な社会革命を牽引」と題し、裏の意味が「政敵を消し去る」と広く認識されている「自我革命」に47回も言及。

 

④歴史決議に対する内外の反応は「冰火両重天」、つまり海外ではホットトピックになったが中国内は無関心という状態が併存。国内では習氏になにも期待していない、大騒ぎの茶番(醜劇闹騰)で見るに値しない、ごまをすって迎合する(拍馬逢迎)より黙っているほうがましといった冷めた雰囲気があるとの声。おそらく習氏が期待したほど国内世論の盛り上がりはない。

 

6中全会前〜11月末にかけ7つの省区党委書記(一把手)の交代人事があったが、注目されていた江蘇書記は引き続き江派と目される人物が就任。また過去と異なり、新書記の経歴がみなごく簡単に紹介されているだけの点も奇異に受け止められている。

 

全会期間中も官製メディアは改めて「腐敗に鉄帽子王(清朝時代の世襲皇族)はない」、つまり腐敗汚職摘発にはいかなる例外もないとし、党中央紀律委が15名の高官を規律違反で調査、うち3名は江沢民派の事実上のトップ曽慶紅氏の出身地江西に連なる人物だった(江西では2021年40名以上が失脚)。

 

20大に向け、なお様々な動きがあることを予感させる。

 

 

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