(※写真はイメージです/PIXTA)

コロナ禍で揺れる航空業界ですが、民間企業による空港の運営事例は、ここ数年で国内でも増えてきました。大阪国際空港と関西国際空港の運営に始まり、北海道の七空港の民営化が始まっています。その狙いとは何でしょうか。渡瀬裕哉氏が著書『無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和』(ワニブックス)で「空港施設の民営化」の狙いを明らかにします。

オリックスはインフラ運営ノウハウを蓄積

民間企業による空港の運営事例は、ここ数年で国内でも増えてきました。大阪国際空港(伊丹)と関西国際空港(関空)の運営や、最近では北海道の場合は国管理空港の新千歳、函館、稚内、釧路、地方管理空港の女満別、旭川、帯広の七空港の民営化が始まっています。

 

北海道7空港は、三菱地所や東急など17社が出資して設立した事業コンソーシアムの北海道エアポートが一体的に運営しています。

 

このほかにも、兵庫県の但馬空港や神戸空港、鳥取空港、静岡空港、和歌山県の南紀白浜空港などで民間委託が開始されています。また、これから開始予定だったり契約が進んでいるところ、コンセッション導入の調査が行われているところなど、これからも民間委託がどんどん進められていくことになっています。

 

インフラは国民の生活に重要な社会基盤でもあるので、その民営化にはインフラが維持できないのではないかと言われることがあります。特に水道事業に関しては、南米などで行われた事例をもとに懸念する声も多くありました。

 

インフラの運営自体は、民間の事業体でも行政でも、やることは決まっています。重要なのは、どのようなリスク分担を行うか、事業の内容や運営方法を整理することです。そのうえで民間に何を委託するかが決まるので、コンセッションが進められていく過程で行政が行っていた事業の内容が可視化され、より安全なものになっていく可能性もあります。

 

現在進められている空港の民営化では、管制を引き続き行政が行い、滑走路を含めた空港施設の運営権が民間企業に委託される形となっています。他の国でも、民営化による問題は契約でのリスク分担が曖昧だったり、逆に行政側が必要な措置を行わなかったことを除いて、それほど大きな問題は発生していないのです。

 

空港のような大きな部分での民営化は、地域経済の発展が言われることが多いのですが、もっと重要なことがあります。民営化することで、民間企業もインフラ運営のノウハウがどんどん蓄積されていくことです。これが日本全体の経済にとって良い効果を生む可能性があります。

 

例を挙げると、大阪国際空港と関西国際空港の事例です。この2空港の運営は、リースや金融・事業投資、不動産などを幅広く手掛けるオリックス株式会社と、フランスのヴァンシ・エアポート(VINCI Airports S.A.S.)がコンソーシアムを組んで担っています。

 

2018年には神戸空港を含め、関3空港の一体運営が始まりました。

 

フランスのヴァンシ・エアポート社は、世界的なゼネコン大手、ヴァンシ・グループの一員です。世界ランキング研究所によれば、2020年の建築会社世界売上高ランキングで第5位、フランスでは第1位です。

 

ちなみに、世界売上高ランキングでは、日本の鹿島建設が9位ですから相当な規模であることが分かります。ヴァンシ・グループは欧州やアジアであわせて24の空港を運営していて、空港の建設や改修、運営までグループ全体で担うことができる巨大企業なのです。

 

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    ※本連載は渡瀬裕哉氏の著書『無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和』(ワニブックス)から一部を抜粋し、再編集したものです。

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