
高齢化が進む今、「相続トラブル」はより一層身近な話題になりました。十数人の親族を巻き込んだ大騒動……とはならずとも、少ない遺産をめぐってドロ沼の争いになる例は枚挙にいとまがありません。
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「ウチには関係ないから~」で起きる悲惨事態
高齢化が進む日本社会。経済への甚大な影響が問題視されるなか、隆盛を極める業界がひとつ。「相続ビジネス」です。
かつて、相続トラブルとはお金持ちに限った話だと考えられていました。相続税は数千万円以上の財産を抱えている場合のみ発生しますから、「ウチには関係ない」と思うのも当然だったのかもしれません。
しかし実際のところ、遺産分割調停は2015年度に12,577件、2020年度に13,801件と、毎年1万件以上発生しています。相続問題で揉めている約3割が相続金額1,000万円以下、約4割が1,000~5,000万円未満の家族・親族です(司法統計より)。
なぜ遺産の少ない家庭でトラブルが発生してしまうのか。専門家は下記のように分析しています。
“相続遺産が少ない場合、まさかもめるとは思わず、話し合いをしない。「分けるほどの額でもない」「うちは庶民だから相続は関係ない」などと思ってしまう。実はそこに問題がある。
亡くなる人にとっては少額のお金でも、相続人から見れば喉から手が出るほど欲しいお金かもしれない。いくらかでもお金があると知れば「もらえるならもらいたい」と思うだろうし、兄弟の誰かがもらえば「自分ももらいたい」と思う。それが人間というものだ。”(2018/7 髙野眞弓『炎上する相続』)
このように、高齢化とともに核家族化が進む今、家族と十分なコミュニケーションを取れないまま相続が発生し、遺産をめぐって揉めに揉める事例が相次いでいるのです。
困っているところに、ビジネスチャンスあり。「救いの手」となる専門家も当然にいますが、言われるがまま賃貸物件を建ててしまった……銀行に任せきりにしたらとんでもない手数料を取られた……といった声があるのも事実。