(※写真はイメージです/PIXTA)

日本企業が労働生産性を高めるには、どうすればよいのでしょうか? 長時間労働が見直され、社員の能力を上げようにもすぐに結果を出すのは難しい…。そんな現代日本においては、人材の「パフォーマンス」を高めることが効果的です。事例とともに、ハイパフォーマーを育てる実践的な方法を見ていきましょう。

ハイパフォーマーを育てるには「絶対評価」が有効

さらに人事担当者に話を聞いたところ、相対評価で人事評価をしていることが分かりました。

 

人事評価には、相対評価と絶対評価があり、それぞれメリットとデメリットがあります。

 

■相対評価のメリット、デメリット

相対評価のメリットは、まず評価者が評価しやすいことです。メンバー同士を比較して、順位を割り振るだけなので、さまざまな評価基準で評価しなければならない絶対評価よりは簡単です。そもそもあまり明確な評価基準を作る必要もありません。また順位をつけるだけなので、評価者が替わってもそう大きく評価は変わりません。また評価者がメンバーに好かれようとして意図的に甘い評価を付けるということもできません。また他者との競争意識が芽生えるため、それがモチベーションになることがあります。

 

相対評価のデメリットは、ある部門で優秀だからといって、別の部門でも優秀だとは限らないということです。あくまでその部門内での順位だからです。また同程度の能力の社員でも無理に順位付けをしないといけないので、そのような場合には本人への説明が困難になります。

 

さらに周囲との比較なので、本人の成長が評価に反映されにくくなります。本人が努力してスキルアップしていても、周囲がそれ以上に努力していたら、相対的な評価は下がってしまいます。あるいはかなり優秀な人がいても、周囲がもっと優秀なら評価が低くなります。ほかの部門ならトップクラスの人が、それでは腐ってしまいます。また過度な競争意識が芽生えると、チームワークが阻害され、足の引っ張り合いになることもあります。

 

■絶対評価のメリット、デメリット

一方、絶対評価のメリットは、評価基準が決まっているため評価の説明がしやすく、評価される側の納得を得やすいことです。評価の透明度が相対評価よりも高いのです。また他者との比較にならないため、個人の成長が評価に反映されやすくなります。これは努力を続けるモチベーションになります。評価基準に基づく個人の能力やパフォーマンスの評価になりますから、ほかの部署にいる従業員との比較が容易で、人事異動を考えるときに大いに参考になります。評価基準があるので、今足りていない能力が分かり、課題や目標を与えやすい(アドバイスしやすい)というメリットもあります。

 

絶対評価のデメリットは、目標設定が適切でないと全員が最高評価になり得ることです。評価と給与が連動しているのであれば、人件費予算が立てにくいことになります。また評価基準は明確だとしても、評価方法が定性的であれば、評価者の主観が基準となってしまいます。なかにはメンバーに好かれようと全員に甘い評価をする評価者も出てくるかもしれません。また評価基準を作ることそのものが難しいというデメリットもあります。

 

まとめると、相対評価は、順位を付けるだけなので評価自体は簡単な分、他人との比較になるためその部門にどのような人が集まっているかに左右されやすく、個人の成長を加味しづらいので成長へのモチベーションがあまり湧きません。一方、絶対評価は評価基準を作ったり、評価方法を確立したりするのが難しい反面、課題や目標がはっきりし、成長もしっかり評価に加味されるため、努力しようというモチベーションが湧きやすいといえます。

 

こうして比較すると、評価基準が分かりやすく評価方法が公平で納得感があれば、絶対評価のほうが優れているといえそうです。評価方法を変えるのは、一朝一夕には難しいのですが、ハイパフォーマーを育成するために有効な手段といえます。

次ページハイパフォーマーを「急いで増やす」には?

※本連載は、梅本哲氏の著書『サイエンスドリブン』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

サイエンスドリブン 生産性向上につながる科学的人事

サイエンスドリブン 生産性向上につながる科学的人事

梅本 哲

幻冬舎メディアコンサルティング

勘や経験に頼った人事では生産性は上がらない! 長時間労働が見直され、社員の能力を上げようにもすぐに結果を出すのは難しい…。 そんな現代日本においては、個人の生産性を決定づける「パフォーマンス」を高めることが…

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