(※写真はイメージです/PIXTA)

娘たちを独立させ、夫を見送った60代女性。不動産収入と年金で生活不安はありません。しかし、広い自宅敷地が目を引くのか、サブリース会社の営業が引きも切らない状態です。しつこい営業トークを言い負かそうとあれこれ調べるうち、自身の将来的な課題が見えてきました。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに、生前対策について解説します。

相続税についてはひと安心…ならば、遺産分割は?

筆者から話の流れのなかで「3人のお子さんへの遺産分割を明確にしておいたほうがいいですね」と申し上げたところ、「じつは、ずっとそれが気がかりでした」と、話は別の方向へ進展しました。

 

鈴木さんのお子さんは娘3人ですが、全員結婚していて自宅もあります。しかし、鈴木さんの自宅とお墓をどうするのか、あいまいなまま放置しては、相続トラブルになってしまうかもしれません。


鈴木さんはあらためて、3人の娘たちと話し合いをすることにしました。


長女と三女は、配偶者の両親と同居しており、将来介護の可能性があります。そのため、もし鈴木さんに介護が必要になっても、面倒を見てもらうことはむずかしい状況だということでした。しかし、同級生と結婚した近居の二女は、鈴木さんの老後の面倒を見ること、お墓を守ることを了解してくれました。二女の配偶者は次男で、両親は数年前に他界しています。

面倒を見てくれる予定の二女に、遺産を手厚く

この話し合いを経て、鈴木さんは遺言書作成に着手しました。


遺言書の内容は、面倒を看てくれる二女に不動産と現金を少し多く、長女と三女は残りの現金を等分に、というものでした。そして、そのように決めた事情についても、付言事項に加えました。

 

「無事に遺言書ができあがって、娘たちの仲たがいの心配もなくなりそうです。安心して老後生活を送ることができます」

 

サブリースの営業マンとのトラブルから遺言書作成という経緯を経た今回の事例ですが、不安を解消した鈴木さんが毎日平穏に過ごせるようになり、筆者も安堵しました。

 

今回の根本的な問題は、相続人は全員家を出ており、実家を継ぐ人がいない、お墓を守る人が決まらないことでした。

 

もしその状況で鈴木さんが要介護状態になれば、なし崩し的に近居の二女が介護をすることになったでしょう。しかし、介護をしたかどうかにかかわらず、相続権は同等です。そのため、親が先に手を打たなければ、不満を募らせた二女とほかの姉妹がトラブルになる可能性もあります。

 

自分亡きあと、残された子どもたちが末永くいい関係を維持するためにも、親は心を配って対策をしておく必要があるのです。
 

 

【対策と注意点】

 

相続税額がどの程度になるのか、事前に調べて把握しておく。

遺産分割をどのようにするのか、子どもたちの立場や役割を考えて、事前に話し合っておく。

 

相続対策を取らないまま、親が特定の子どもに介護等の負担をかけると、子どもが不満を募らせたり、相続時に不公平を訴えたりしてトラブルに発展する可能性があります。親は自分の状況を成り行き任せにするのではなく、しっかりとシミュレートし、家族間で情報を共有しておくことが大切です。

 

※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

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本記事は、株式会社夢相続のサイト掲載された事例を転載・再編集したものです。

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