(※画像はイメージです/PIXTA)

ただでさえややこしい相続手続き。国をまたいだ相続が発生すると、「どちらの国の法律に準拠すれば?」といった疑問が湧き出ます。本記事では、日本と韓国の相続手続きについて見ていきましょう。日本経営ウィル税理士法人の顧問税理士・親泊伸明氏が解説していきます。

「子供全員が相続放棄をしたら」…日本と韓国の違い

それでは、第一順位の「子」と「直系卑属」の違いについてですが、具体的には、「子」の全員が相続放棄をした場合に影響してくることになります。日本の民法では、相続放棄をしますと、その相続人は当初から存在していなかったことになりますので、その子、すなわち、孫が代襲して相続をすることはありません。

 

韓国民法でも同様で、「子」が相続放棄しても「孫」が代襲相続人になることはありませんが、子供全員が相続放棄をした場合には、「孫」も直系卑属ですので、代襲相続人としてではなく、第一順位の相続人、すなわち直系卑属として相続人になります。

 

事例で確認すると、次のようになります。

 

事例①子供全員が放棄した場合

 

子供が全員相続放棄をした場合の取り扱いの違いです。仮に親族が配偶者と子1人、孫であった場合、子が放棄すると日本では相続人は配偶者だけになりますが、韓国の場合には、配偶者と孫が相続人になります[図表3]。

 

[図表3]

 

日本では孫に相続をさせようとすると、孫に財産を遺贈する旨の遺言書を作成しなければなりませんが、韓国では事後的に、子供全員が相続放棄をすることにより、孫に相続をさせることができます。

 

日本の場合、代襲相続以外で孫が相続すると相続税の2割加算という相続税法上の規定により相続税が増加しますが、韓国の相続税法にも同様に世代飛越税という規定があり、相続税が3割(未成年者である直系卑属が受けた相続財産価額が20億ウォンを超える場合には4割)加重されます。

 

あまり税金の問題が生じない程度の金額の相続であれば(基礎控除の範囲内など)、子は相続を放棄して、孫が相続することで、世代を1つ、飛ばすことが可能になります。

 

子の所有している財産がもともと多かったり、子がすでに一次相続で多額の財産を相続したりしていたら、二次相続では、財産は子ではなく孫が直接相続することも検討すべき事項と考えられます。

 

次に、直系卑属(親、祖父母など)も直系尊属(子、孫など)もいないケースです。

 

事例② 直系尊属・直系卑属もいない場合

 

[図表4]

 

子供も直系尊属もいない夫婦の場合、日本では相続が発生すると、遺言書がなければ、今まであまり付き合いのなかった被相続人(配偶者)の兄弟姉妹が出てきて、遺産の分割を要求されて苦労されるという事例もお聞きします。

 

そのため、日本では遺言書(すべての財産を配偶者に相続させる旨の遺言書)の作成をお勧めしていますが、韓国の民法による場合には、配偶者の単独相続になりますので、遺言書の作成は不要ということになります。

 

■まとめ

 

今回は日本と韓国の民法(相続法)の違いのうち、法定相続人について解説しました。日本と韓国の民法(相続法)では法定相続人に違いがあり、遺産を相続する方が変わる場合があります。

 

なお、相続人の方が被相続人より先に亡くなられている場合などには、代襲相続となります。

 

次回は代襲相続人について説明します。

 

 

親泊 伸明/しんぱく のぶあき

日本経営ウィル税理士法人 顧問税理士

 

本稿は筆者が令和3年5月現在の情報に基づき、一般的な内容を簡潔に述べたものである為、その内容の正確性、完全性、最新性、信頼性、有用性、目的適合性を保証するものではございません。実際の判断等は個別事情により取り扱いが異なる場合がありますので、税理士、弁護士などの専門家にご相談の上ご判断下さい。

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