(写真はイメージです/PIXTA)

遺産をそのまま相続できる現物分割は最も分かりやすく、手続きも簡単な分割方法ですが、不公平な内容になりやすいというデメリットもあります。本記事では、現物分割するのが難しい相続財産の分割方法について、行政書士法人ストレートの大槻卓也行政書士が事例をもとに詳しく解説します。

遺産分割禁止の期間と手続について

遺言による遺産分割禁止期間、共有物分割禁止期間との均衡から、遺産分割禁止の期間は5年を超えることはできないとされています。

 

したがって、5年以内に遺産分割禁止の原因となった事由が解消されなかった時には、再度5年以内の分割禁止を申し立てることになります。

 

遺産分割禁止を第三者に対抗するためには、登記が必要です。遺産分割禁止の登記は、相続登記をした後、相続人全員による共有物不分割の特約を原因とする所有権の変更登記申請を行います。

代償金を支払う代償分割で単独の相続が可能

現物分割も換価による分割も困難な場合、相続人の1人に財産を相続させ、その代わりに他の相続人に対する債務を負担させる方法があります(代償分割)。本事例でも現に居住している相続人が1人で店舗兼自宅を相続し、その代わり、弟の相続分に相当する金銭(代償金)を支払う約束をすることができます。

 

ただし、この場合、相続をする人に代償金の支払能力があることが前提です。この方法は、当事者間の遺産分割協議書でも可能であり、遺産分割調停であれば、調停調書に記載してもらいます。

 

遺産を現物で取得する相続人は、遺産分割の成立と同時に遺産の所有権を取得することができます。代償金の支払を受ける相続人は、代償金債権を取得することになりますが、仮に不履行の場合でも、遺産分割協議の無効や解除を主張することはできません。

 

■参考判例の紹介

・遺産の範囲について相続人間で争いがあり、その一部の財産について民事訴訟が係属しているというのみではいまだ民法907条3項にいう「特別の事由」があるとはいい難いとして、原審が遺産全部についてなした3年間の分割禁止の審判を取り消して差し戻した事例

 

・家庭裁判所は、特別の事由があると認めるときは、遺産の分割の方法として、共同相続人の1人または数人に他の共同相続人に対し債務を負担させて、現物をもってする分割に代えることができるが、上記の特別の事由がある場合であるとして共同相続人の1人または数人に金銭債務を負担させるためには、当該相続人にその支払能力があることを要すると解すべきであるとされた事例

現物分割するのが難しい相続財産の分割方法まとめ

遺産分割については、遺言による指定がなければ相続人間の協議で決定する即時の分割が不能の場合、遺産分割禁止を申し立てることができる分割できない相続財産の場合、代償金を支払い、所有権を取得することができる

 

 

大槻 卓也

行政書士法人ストレート 代表行政書士

 

 

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    本記事は行政書士法人ストレートのコラムを転載したものです。

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