(※写真はイメージです/PIXTA)

購入した収益物件に、前オーナー時代から住んでいる貸借人が、6ヵ月間も家賃を滞納していました。新たにアパートの所有者となった賃貸人は、この「家賃滞納常習者」である貸借人との契約を解除できるのでしょうか。賃貸・不動産問題の知識と実務経験を備えた弁護士の北村亮典氏が、実際の裁判例をもとに解説します。

「滞納賃料債権」を譲り受けていれば契約解除が可能

しかし、本件の事例のように、

 

前所有者の際に発生していた滞納賃料債権について、建物の所有権譲渡と併せて新所有者(新賃貸人)が譲り受けた場合

 

には、当該滞納賃料が新所有者に帰属します。そして、新所有者が当該滞納賃料の請求をして、その支払がなされない場合には、新所有者と賃借人との間の信頼関係は破壊されたということできますので、新所有者も契約の解除が可能となる、と考えることができます。

 

この問題を論じた裁判例が東京高等裁判所昭和33年11月29日判決の事例です。

 

この判決は、本件と同じく、新所有者が前所有者の間で発生していた滞納賃料についても譲り受けていたという事案において、

 

①「賃料不払に基く賃貸借契約の解除権は、賃貸人に専属するものではあり、延滞賃料債権が第三者に譲渡された場合には、その第三者が賃貸借契約の当事者でなければ、解除権を有しないのはもちろんである」

 

と述べた上で、

 

②「新所有者は上記認定のとおり延滞賃料債権を譲り受けたのは新所有者が本件家屋を買受けた結果、賃借人との本件賃貸借契約の賃貸人たる地位を承継するとともになされたものであり、しかも、新所有者人は譲り受けた延滞賃料債権ばかりではなく、新所有者が賃貸人となつた後の延滞賃料債権(引続き合計十五ケ月分)をも合せて請求しているのであるから、契約解除の前提としての催告としてはもちろん、その延滞賃料を上記認定の相当期間内に支払わないことを条件としての契約解除の意思表示もまた有効といわなければならない。」

 

と判示しました。

 

この事案では、新所有者の元でも新たに賃料の滞納が生じていたことが伺われますが(ただし、その期間は不明)、いずれにしても、①の判示から、賃貸借契約の当事者が延滞賃料債権の譲渡受けた場合の解除を認める趣旨での判示であると解釈することはできます。

 

※この記事は、2020年3月29日時点の情報に基づいて書かれています(2021年12月28日再監修済)。

 

北村 亮典

弁護士

こすぎ法律事務所

 

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    ※本記事は、北村亮典氏監修のHP「賃貸・不動産法律問題サポート弁護士相談室」掲載の記事・コラムを転載し、再作成したものです。

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