(※写真はイメージです/PIXTA)

小児科医である大宜見義夫氏は、「あるがままを受け入れられ、自己の存在価値を見出し得たとき、人は一変する」と語ります。同氏が診察した、一人の少女の事例を見ていきましょう。

登校を決意するも…男子生徒の心ない言葉で体調悪化

中二の秋、母親に反抗する出来事が起きた。高校進学を控え、焦る母親はせめて修学旅行だけでも参加させようと説得したが、彼女は頑として受け入れなかった。

 

母親と「行く、行かない」を繰り返す中、A子自身がインフルエンザに罹患し結果的に行かずに済んだ。このことが契機となり、自己主張を口にするようになった。

 

次第に反抗的になり、母親から「高校どうするの?」と聞かれても、「いいから、黙っていて!」と反発した。

 

母子げんかで一週間、口をきかないので母自身が「言い過ぎた」と折れたこともあった。自己主張を始めた娘に困惑する母親に、自己主張の大切さを伝え、親を恐れず言い返せてこそ、仲間とも対等に言い合えるようになると伝え、母親を励まし続けた。

 

中学二年の二月、学校からの働きかけもあり、初めてパソコン教室に参加できた。もともとパソコン操作と絵画は得意だったからすんなり行くことが出来た。

 

以来、担任とのやりとりを通じ「学校に行く」と決断し、週一、二回のペースで登校を開始した。

 

中三の新学期を前に、決意を語るかのようにアニメのキャラクター人形を胸にぶら下げ、オシャレな服装で外来に現れた。パソコンやIT技術を活かせる工業高校の受験を決意し、内申を意識し学校復帰を決めたという。

 

しかし新学期を迎え、通常学級への復帰にチャレンジしたものの、男子生徒から「今頃、来てどうするの?」「何でフリースクールに行かないの?」と、心ないからかいを受け頓挫した。

 

情緒学級に籍はあるものの、中一時代の感情的しこりが残っていて行けない、知的学級では授業レベルが低過ぎると、A子は途方にくれた。

 

学校側は特段の配慮を行い、個室をあてがってくれた。しかし、個室学習では高校入試に必要な内申の評価の対象にはならないこともあり、独りぼっちの個別学習はすこぶるつらいものだった。

 

無理な登校を続けているうちに様々な身体症状が出るようになった。胃痛、頭痛、めまい、吐き気が顕著になり、生理痛も猛烈を極め、わずか三か月で体重が二kgも減少した。学校担任も心配し、そんなに無理して登校しなくていいのではと言ったほどだった。

 

そんな中、頻繁に腹痛を繰り返し、ついには吐血するに至った。診察の結果、胃潰瘍が判明した。夏休みの休養を得て、A子は決意を固め、休み明けを契機に通常学級への復帰を試みた。やせ細って通常学級にもどったA子をクラス仲間は温かく迎えてくれた。必死の思いで個室学習に向かう痛々しさに感銘を受けたかもしれない。

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    ※本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『爆走小児科医の人生雑記帳』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。最新の法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。
    ※「障害」を医学用語としてとらえ、漢字表記としています。

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