(写真はイメージです/PIXTA)

仮想通貨やNFTなどのデジタル資産に投資する人が増えてます。不動産や預貯金などと異なり、実物がない資産であるデジタル資産は相続することができるのでしょうか。相続に詳しいAuthense法律事務所の堅田勇気弁護士が解説します。

仮想通貨は相続できる?

それでは、仮想通貨は相続の対象となるのでしょうか? 民法上、「死亡した人の財産に属した一切の権利義務」が相続の対象となる(ただし一身専属権は除く)とされていますので、仮想通貨も当然相続の対象となるものと考えられます(もっとも、仮想通貨やNFTについてはまだまだ議論が尽くされていない分野であり、この点について明確に述べた裁判例などもないため、明言は避けさせていただきます。)。

 

もっとも、日本の法律上相続の対象となるからといって、相続人がその仮想通貨を実際に使用したり、日本円などの法定通貨に交換したりできるとは限りません。それでは、仮想通貨を相続人が使用したりする法定通貨へ交換したりするためにはどうすれば良いのでしょうか?

 

故人が取引所を通じて仮想通貨を取引していた場合と、取引所以外で仮想通貨を保管している場合とで手続が異なりますので、2つに場合分けして解説していきましょう。

 

故人が取引所を通じて仮想通貨を取引していた場合

 

故人が取引所を通じて仮想通貨を取引していた場合には、相続人が取引所に連絡して相続手続を行うことになります。仮想通貨が日本の金融庁の登録を受けた取引所で保管されている場合には、比較的スムーズに相続手続ができるケースが多いため安心です。

 

例えば、「Coincheck」や「bitFlyer」など主要な取引所では、FAQで相続手続について説明が記載してあります。説明に従い、お問い合わせフォームから手続を行いましょう。

 

また、以前は取引所によって相続手続の方法がまちまちでしたが、現在では金融庁の登録を受けている取引所であれば、通常の証券口座と同じように、概ね次のような流れで相続手続ができると考えておくと良いでしょう。

 

■取引所へ連絡する

 

仮想通貨の取引をしていた人が亡くなった場合、相続人はまず被相続人が仮想通貨を取引していた取引所へ連絡します。

 

連絡の方法は、電話などでできる場合もあれば、インターネット上のお問い合わせフォームで連絡をする取引所もあるため、FAQなどを確認すると良いでしょう。死亡の旨の連絡をした時点で口座が凍結され、以下の手続を踏むまでは出金ができなくなります。

 

■残高証明書を取り寄せる

 

次に、取引のあった仮想通貨の取引所から、残高証明書の発行を受けます。残高証明書を確認することで、被相続人がその取引所にどの資産をいくら保有していたのかがわかります。残高証明書の発行を受けるためには、主に次のような書類が必要となります。

 

■残高証明書の発行に必要な書類

・被相続人が亡くなったことがわかる戸籍謄本又は除籍謄本

・手続をする相続人と被相続人との関係がわかる戸籍謄本や除籍謄本

・手続をする相続人の本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)

 

仮想通貨の取引所は、銀行のような窓口がないことが多いため、郵送でやりとりをすることが一般的です。

 

■遺産分割協議を成立させる

 

残高がわかったら、相続人全員で話し合い、その仮想通貨を誰が相続するのかを決めます。仮想通貨のみについて話し合うのではなく、被相続人の持っていた仮想通貨以外の資産を誰が相続するのかと併せて、仮想通貨の分け方も決めましょう。

 

なお、仮想通貨は可分債権であるとして、遺産分割協議をするまでもなく、法定相続分に応じて当然に相続人に相続されるという解釈もあり得ますが、この点に関する裁判実務は確立されていないため、遺産分割協議の対象としておくのが無難であると思われます。

 

また、被相続人が遺言書を遺していた場合には、原則としてその遺言書に記載された人が仮想通貨を相続することになります。この場合には、遺産分割協議は必要ありません。

 

■必要書類を提出する

 

仮想通貨を相続する人が決まったら、必要書類を取引所へ提出します。必要書類は相続人の状況などによって異なりますが、通常の銀行口座の解約と同様、おおむね次のような書類が必要になると考えてください。

 

■取引所に提出する書類

・取引所所定の相続届

・遺産分割協議書(相続届に相続人全員が署名捺印をした場合には不要となることが一般的です)

・相続人全員の印鑑証明書

・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本など

・被相続人の最後の住所のわかる住民票の除票など

・相続人全員の戸籍謄本

・手続をする人の本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカード)

 

■口座解約後、出金ができるようになる

 

提出した書類に不備がなければ、被相続人の口座は解約され、代表相続人の銀行口座に出勤されることとなります。

 

取引所以外で保管されている場合

 

仮想通貨は上記のような取引所で保管されている場合が多いとはいえ、中にはパソコンやスマートフォン上のウォレット(財布)などで保管されている場合もあります。現金を銀行などに預けず、自宅の金庫などで保管していたような場合をイメージされると良いでしょう。

 

仮想通貨は硬貨やお札のように直接手で触れることはできませんので、金庫の代わりにパスワードを掛けたデジタル上の財布で保管するわけです。

 

こういった場合には、取引所に預けている場合と比べ、手続が難航するケースが少なくありません。なぜなら、パソコンやスマートフォンなどの端末のパスワードと、ウォレットのパスワードをどちらも解除しなければならないためです。

 

自宅の金庫の暗証番号がわからなければ、中にある現金が使えないのと同様に、パスワードが解除できなければ、仮想通貨を引き出すことはできません。相続をする権利があったとしても、使うことさえできなければ、絵に描いた餅となってしまいます。対策については後述します。

 

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本記事はAuthense遺言・遺産相続のブログ・コラムを転載したものです。

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