コロナショックは健全経営されていた会社ほど経営インパクトを受けやすい。(※写真はイメージです/PIXTA)

新型コロナの感染拡大はホテルや一部の商業施設を除いて、市況の回復が見られるのではないかといいます。今後、国内不動産市場にどのような影響が予想されるのか、国際投資アナリストが著書『最強の外資系資産運用術』(日本橋出版、2021年4月刊)で解説します。

コロナ禍で一番大きな悪影響を受けたホテル

■ホテル

 

物流施設とは対照的に、コロナ禍において一番大きい負の影響を受けたのは、ホテル(及び民泊)だと思います。外国人依存が大きかった東京や大阪など都市部へのインバウンドが激減したことや、2020年でのオリンピック開催延期も追い打ちとなりました。またコロナ禍における移動制限もあり、国内旅行でも全体的な需要低減となり、総合的にインパクト大きい、と見られています。

 

インバウンド激減により、大阪のホテルは身売り話となったり、ビジネスホテルのようなFirstCabinやWBFなど、ホテルオペレーターの破綻などが報告されています。特にオリンピック特需やインバウンドをターゲットに運用計画されていたホテルに関しては、今後国内でのコロナ状況が一定程度落ち着いても、コロナ感染拡大の状況に応じて、国境が空いていく、という状態なので、海外からの観光ニーズはすぐに回復とはならないか、と思われます。

 

そして一部のリミテッドホテルは、ホテル市場の供給過多を見越して、なのかは分かりませんが、eSports 特化型ホテルに変化させた施設がオープンさせたそうです。最近の力強いeSports への嗜好転換にホテルを合わせていく、という、トレンドに沿ったピボット(方向転換)のような形でしょうか。

 

またホテルの宿泊以外部分の飲食、所謂F&B(Food&Beverage)に関しても、コロナ感染対策を行いながら、一定程度の回復はみられるかもしれませんが、以前ほど大勢でのパーティーや懇親会がホテル会場にて行われにくくなっている現状もあり、リアルイベントが回復するまでは時間はかかると思います。

 

■日本のREIT(不動産投資信託)市場

 

最後に、投資家として不動産市場へのアクセスは、実物不動産かREIT に限られております。様々なサイトに実物不動産とREIT の比較がされていますが、簡単にこちらにまとめておりますのでご確認ください。

 

実物不動産ー集中投資、基本的に大口投資(数百万円から)、固定資産税などの運用経費や修繕費、異なる売買時の税金(短期・長期保有)、比較的低い流動性、レバレッジ(融資)活用REIT―分散投資、小口・少額から投資、20%の証券税率適用、高い換金性・流動性(上場株式のように)、レバレッジ(融資)なし

 

不動産市場としては、不動産関連の債券(商業用不動産ローンの証券化商品と呼ばれるCMBSなど)が引き金となった2008年の世界金融危機以降、大きく下落した不動産価格は、総じて一貫して上昇となってきました。その上昇要因の1つに、上場株のように流動性も高い、REIT市場への資金流入もあるといわれています。

 

黒田日銀総裁による大規模な金融緩和によるREIT株の購入に加えて、低金利の環境下で高利回り投資を目指す投資家が、REITの安定的な配当利回りに注目して投資していたことから、「イールド・ハンティング(利回り狩り)」と言われるような、投資行動が見られました。

 

コロナ感染拡大が見られ、世界中の株式市場が暴落となった2020年3月には、投資家による需要が急激に消えたことで、REIT価格も下落し、損失確定での、長期投資家の売り(地銀など)もこの流れを加速させ、需要の蒸発につながった、とも言われています。

 

しかし2020年3月の下落以降、日銀による更なる金融緩和姿勢も見られたことも好感され、REIT市場は上昇基調に転じています。加えてREITは結局実物不動産を購入したファンドでありますので、一部のサブセクターを除いて、市場全体の回復が見られるという上記見通しをベースにすると、REIT市場も中長期的には回復していくのではないかと考えます。

 

加えて投資ファンドからの投資待機資金が多いこと、運用難の投資家ニーズからも、不動産市場へ資金が今後も流入すると考えられており、これらの要因も直接的・間接的にREIT市場を支えていくと思います。

 

後藤康之
日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
国際公認投資アナリスト(CIIA)

 

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※本連載は、後藤康之氏の著書『最強の外資系資産運用術』(日本橋出版、2021年4月刊)より一部を抜粋・再編集したものです。

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