(※写真はイメージです/PIXTA)

長引くコロナ禍……営業不振に陥ったテナントが、既存店舗を閉店する動きがでています。一方、銀座ではいわゆる「ラグジュアリーブランド」が出店ニーズを牽引しており、1件の募集物件に対して10社ほどが申し込むような事例もありました。今後も「銀座一等地」のニーズは衰えないのか、シービーアールイー株式会社(CBRE)の栗栖郁氏が、さまざまデータをもとに紐解いていきます。

2022年もラグジュアリーブランドが市場を牽引か

2022年の銀座エリアの賃貸市場は、ラグジュアリーブランドが引き続き出店ニーズを牽引することになりそうだ。

 

直近では、ハイストリートの中でも好立地となる新規開発の募集物件に、ラグジュアリーブランドの出店が内定した事例があった。賃料はコロナ禍前の水準となる。別の新規開発の募集物件でも、複数のラグジュアリーブランドから引き合いがある。

 

ラグジュアリーブランドの出店ニーズは、銀座エリアに路面店舗がないブランドと既存店舗の移転の2つに分けられる。数としては後者が多く、立地改善・拡張、そして建て替えによるニーズとなる。既存店舗に固定客がついているため、空白期間を作らずに移転先を決めることが重視され、立地や面積が希望に合えば賃料はオーナーの希望が受容されやすい。

 

銀座エリア内の移転ニーズは、ラグジュアリーブランド以外のリテーラーでもみられそうだ。ただし、実際の出店には時間が掛かるケースもあると予想する。

 

なぜなら、既存店舗よりもよい立地に適正な面積で出店したいという意向がある一方で、そういった募集物件では賃料負担能力に勝る複数のラグジュアリーブランドと競合することが考えられるためだ。

 

銀座エリアに路面店舗がないリテーラーによる新規出店として考えられるのは、コロナ禍で業績を伸ばしているリユースや、ブランドの認知度を向上させたい新興リテーラーが挙げられる。

 

ただし、コロナ禍前のハイストリート賃料を支払えるほどの能力はないリテーラーが含まれており、オーナーが賃貸条件に柔軟に対応することで、実際の出店に繋がりそうだ。

アウトルック…好立地物件ではコロナ禍前の賃料水準も

銀座ハイストリート賃料(図表8)は、2016年Q2をピークに下落したが、2017年Q3には底入れした。その後しばらく横ばいが続き、2018年Q4と2019年Q3にそれぞれ上昇。しかし、2020年に入ってコロナ禍の影響を受け、1年間で4.3%下落。2021年Q1は対前期比1.6%減、Q2は横ばいだったものの、Q3は同0.6%減の24.15万円/坪となった。

 

出所:CBRE、2021年11月

[図表8]銀座ハイストリート賃料の予測(円/坪)2021年Q4-2023年Q3 出所:CBRE、2021年11月

 

2020年から下落していた賃料は、2021年Q3時点で底入れしたとみる。賃料は今後、2022年Q2にかけて現在の金額で底ばいし、2022年Q3には対前年同期比で0.6%上昇すると予測する。

 

まず、ハイストリートの中でも好立地の募集物件では、ラグジュアリーブランド同士が競合することで、コロナ禍前の賃料水準でテナントが内定する可能性がある。

 

一方、複数の空室がある、ハイストリートの中でも中心地から離れたエリアでは、リテーラーの引き合いの弱さから空室の消化にはやや時間が掛かりそうだ。

 

また、リーシングを優位に進めるためには、オーナーが賃料水準を下げる可能性もある。そのため、2022年Q2までは賃料の上昇と下落圧力の両方が掛かることによって、現在の金額で底ばいするだろう。

 

2022年上期を目途に、ハイストリートの中でも好立地の募集物件でテナントが内定することで、2022年下期には中心地から離れたハイストリートでもテナントの内定が進み、賃料も上昇に転じると考える。

 

ワクチン接種の進展などを背景に、リテール市場を下支えしている日本人を中心とした国内需要層の消費マインドが、改善していることが前提条件となる。

 

経済の回復が続くことで、向こう2年間で賃料は2021年Q3と比べて2.1%上昇、コロナ禍前の2019年Q4に比べて4.5%減まで回復すると予測する。

 

なお、銀座4丁目交差点付近の超一等地を対象としたプライム賃料は、今後も横ばいで推移すると予想。稀少な好立地に対して、出店に前向きなラグジュアリーブランドが常にあることが理由である。

 

 

栗栖 郁

シービーアールイー株式会社(CBRE)
リサーチディレクター

 

【関連記事】

税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

恐ろしい…銀行が「100万円を定期預金しませんか」と言うワケ

 

親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

 

「儲かるなら自分がやれば?」と投資セミナーで質問すると

※本記事はシービーアールイー株式会社(CBRE)の「不動産マーケットアウトルック 2022」より一部抜粋・再編集したものです。
※本文書は貴社の責任と判断で利用いただくものであり、弊社は、貴社又は第三者が本文書に基づいて行われた検討、判断、意思決定及びその結果について法律構成・請求原因の如何を問わず一切の責任を負わないものとします。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧