
相続の際、多くの相続人の方が、故人の銀行口座や証券口座、生命保険の所在を巡って大変な苦労をしています。「存在するかどうかあたりをつけ、しらみつぶしに調査する」という、先の見えない作業は、時間や体力を浪費するばかりか、専門家へ依頼すれば、多額のコストが発生します。不動産と相続を専門に取り扱う、山村暢彦弁護士が、情報整理の重要性について解説します。
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「お父さん、銀行口座をいくつ持っていたのかしら…」
相続に際し、相続人の方々が非常に苦労するのが、被相続人の預貯金の問題です。預貯金の口座を持たずに暮らしている方はまずいないと思いますが、余計な銀行口座を残さず、ある程度にまとめておくことが大切です。
たとえば、会社員時代に何度か転勤した経験があれば、転勤先の地区の金融機関にいくつか口座をお持ちかもしれません。そしてそこに数十万円単位の中途半端な預金が放置されているかもしれません。これらを解約し、中身を普段使っている銀行へ移動させておくのです。
自分自身の手で行うのであれば、さほど手間ではないでしょう。自分の口座ですから把握しているでしょうし、本人であれば解約の手間もさほどかかりません。しかし、相続の段になって、そのような口座があると大変です。専門家に解約手続きを頼むだけでお金がかかりますし、預金残高によってはマイナスになることもあります。
使わない口座に残っているお金を、本人がすべて整理してまとめておくだけで、相続手続きはぐっと楽になるのです。事情によっては、金融機関などの付き合いで、残している定期預金などがあるかもしれませんが、その場合は、存在をしっかりとリスト化しておくことです。
エクセルでもワードでも構いませんから、ちょっとメモ書き程度の情報を残すことで、相続手続きの際の事務的な費用をかなり縮小することができます。