(※写真はイメージです/PIXTA)

「新築同様にフルリフォーム完了」と謳われた築45年のマンションを購入した買主。しかし、排水管が交換されておらず、詰まりが発生していることが判明しました。買主は排水管の交換費用を売主に賠償してもらえるのでしょうか。賃貸・不動産問題の知識と実務経験を備えた弁護士の北村亮典氏が、実際の裁判例をもとに解説します。

裁判所が「瑕疵担保責任」を否定したワケ

上記の前提を踏まえ、本件において裁判所は、

 

「本件建物の台所に存在する流し台に、一度に多量の水を流し入れると、一時的に水が滞留し、排水口から空気が噴出してくる場合もあることが認められるが、流水の状況は、若干時間を要するものの、短時間のうちに流れ切る程度のものであり、流し台の使用に関して、特段支障になるとは認め難いものである。」

 

「また、本件建物は、昭和43年12月に建築されたマンションの一室であり、本件売買契約当時、建築後44年以上が経過していたことが認められるところ、このような本件建物の客観的な状況などにかんがみると、設備等に関して、現在の新築物件に劣る部分があることは当然に想定されるほか、

 

経年劣化により機能面において必ずしも十全とはいえない点が存在することも十分に想定されるから、前記のような流水の状況が存在することをもって、本件建物が、前記のとおりの築年を経過した中古マンションとして通常有すべき品質又は性能を欠くものであったとは認め難いといわざるを得ない。」

 

と述べて、瑕疵担保責任を否定しました。

 

なお、本件では、売主は、売買の広告において「新築同様にフルリフォーム完了!」と表示して本件建物を売りに出していたため、買主側はこの点を捉えて、「本件建物に新築と同様の品質及び性能が備わっていることを保証していたとして、前記のような流水の状況が存在することが本件建物の瑕疵に当たることになる」と主張しました。

 

しかし、この点についても、裁判所は、

 

「本件建物が建築から相当年数を経過した中古マンションであったことは本件売買契約の前提とされていたのであって、リフォームが行われたとしても、これが現在における新築物件と同様の品質及び性能を備えることはおよそ期待できる状況にはなかったと考えられるから、前記のような表示があったことによって、瑕疵の存否に関する前記の判断が左右されるものではない。」

 

と述べて、やはり売主の責任を否定しました。

 

本件のように、築年数が相当経過した中古物件の売買においては、不具合があっても、それが瑕疵(契約不適合)か、経年劣化かが問題となります。

 

築年数が相当経過した物件の売買では、トラブル防止の観点からは、当事者間において機能面が必ずしも十分に満たされていない可能性があることについて、可能な限り認識をすり合わせておく必要があること、また、インスペクションの利用も検討されるべきと考えられます。

 

※この記事は、2021年4月11日時点の情報に基づいて書かれています(2021年12月21日再監修済)。

 

北村 亮典

弁護士

こすぎ法律事務所

 

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※本記事は、北村亮典氏監修のHP「賃貸・不動産法律問題サポート弁護士相談室」掲載の記事・コラムを抜粋・再編集したものです。

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