(※写真はイメージです/PIXTA)

会計をチェックすれば、会社にとってどの商品が利益を生み、どの商品が足を引っ張っているのかは一目瞭然です。それをもとに「売れているものにリソースを割く」「売れないものを損切りする」判断をすれば、ムダなく利益が追及できるはずなのです。しかし、会計嫌いの社長は、勘や経験で動きがちで、それが競争力低下の原因となることも少なくありません。中小企業の実情を知り抜く税理士・公認会計士が解説します。

通帳ばかりチェックして、資金繰りが危機的状況に!

会計嫌いの社長でも、必ずチェックしているのが「通帳の残高」です。

 

確かに、お金はあればあるほどうれしいものですし、安心感につながりますから、気持ちは理解できます。ただ、通帳に出ている残高は、会社の状態のごく一部を示すものでしかありません。このことは理解しておく必要があります。

 

例えば預金残高が1000万円あるとしても、来月に2000万円の支払いが控えていたのなら、資金ショート目前です。さらに、その1000万円が売上によるものではなく、借金で得たものだとしたら、返済のことを考えなくてはいけません。

 

逆に、当面の支払いにも十分対応できるにもかかわらず、たくさんの預金残高があるのであれば、お金を有効に使えていないということです。いまは銀行に預けていてもお金は増えませんから、設備投資や新規事業などに投じるべきです。

 

このように、通帳の残高だけを見て一喜一憂するのは、はっきり言って意味がありません。見るべきなのは、やはり会計です。常に動いているお金を、会計でとらえる必要があります。

 

絶対に避けなくてはならないのは資金ショートです。会社が支払わなければならないお金には、多くの場合、期限があります。「仕入れ代金を翌月末までに支払う」「借金は毎月○日に返済する」といった約束事を守らないと、信頼を失ってしまいますし、最悪は倒産することになります。

 

会社に入ってくるお金と、出ていくお金をコントロールすることを「資金繰り」といいますが、社長にとって、会社の資金繰りは悩ましい問題です。

 

これに失敗すると、「黒字倒産」という事態に陥る可能性もあります。

 

会計を知らない人は、「黒字なのになぜ倒産するの?」と疑問を感じるかもしれませんが、黒字になっていることと、会社にお金があることは、イコールではないのです。コストを超える収益があれば一応黒字ですが、通常「収益が発生するタイミング」よりも「入金のタイミング」は遅いので、黒字でも会社のお金が枯渇することがあるのです。

 

資金繰りには注意が必要なパターンがいくつかあります。

 

まずは、「多額の売掛金があり、支払予定日まで時間がかかる」というケースです。中小企業の取引は、商品やサービスを提供する日よりも、代金が支払われる日は遅くなるのが一般的です。

 

ということは、お金が支払われるまでに、なにか支払いが必要になれば、手持ちの資金から支払うことになります。また、取引先が倒産するなどして売掛金を回収できなくなる事態も考えられます。売掛金が発生してから、入金されるまでの時間を「入金サイト」といいますが、入金サイトが長くなると、それだけ黒字倒産のリスクは高くなります。

 

大きな設備投資をするときにも、資金繰りに注意が必要です。設備投資が売上につながるまでは、長い時間がかかります。しかも、設備投資をすると、通常は「減価償却」という計算を行うことになります。減価償却の計算を行う場合、購入した資金が全額すぐに費用になるわけではなく、耐用年数という、使用が見込める年数で分割して費用化します。

 

例えば、1000万円の設備投資をして、耐用年数が10年とすると、費用にできるのは1年あたり100万円にとどまります。この設備投資で、仮に売上を300万円増やした場合、費用にする100万円に対して売上300万円なので、一見すると黒字なのですが、実際はキャッシュが1000万円なくなっているわけですから、資金不足を招きかねない状況です。

 

会社のお金は、常日ごろから動いています。このすべてを社長の頭のなかだけで管理するのは不可能ですし、通帳の残高を見るだけでは、不十分です。会計嫌いのままでいると、いつも資金繰りの不安を抱え続けることになってしまいます。

 

小形 剛央
税理士法人小形会計事務所 所長
株式会社サウンドパートナーズ 代表
税理士・公認会計士

 

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本記事は『たった3か月で売上高倍増!これだけは知っておくべき社長の会計学』(幻冬舎MC)より抜粋・再編集したものです。

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