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本記事は、ニッセイ基礎研究所が公開した経済予測・経済見通し に関するレポートを転載したものです。

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    実質成長率は2021年度2.7%、2022年度2.5%、2023年度1.7%を予想

    実質GDPが直近のピークを超えるのは2023年度

     

    2021年7~9月期のGDP2次速報を受けて、11/16に発表した経済見通しを改定した。実質GDP成長率は2021年度が2.7%、2022年度が2.5%、2023年度が1.7%と予想する。

     

    2019年7~9月期の成長率は下方修正されたが、新型コロナウイルスの感染状況が想定よりも落ち着いており、消費が上振れする可能性が高まったことを受け、2021年10~12月期の成長率見通しを前期比年率7.3%から同8.3%へ上方修正した。

     

    この結果、2021年度の成長率見通しを11月時点から0.1%上方修正した。2022年度、2023年度の見通しは変更していない[図表3][図表4]。

     

    [図表3]実質GDP成長率の推移(四半期) [図表4]実質GDP成長率の推移(年度)
    [図表3]実質GDP成長率の推移(四半期)
    [図表4]実質GDP成長率の推移(年度)

     

    2021年に入ってからほとんどの期間で実施されていた緊急事態宣言、まん延防止等重点措置は9月末で解除された。人流データ(小売・娯楽施設の人出)を確認すると、2021年夏場の人出は前年を下回ったが、緊急事態宣言の解除を受けて持ち直している。

     

    10月の人出は感染症への警戒感が残っていることもあり前年とほぼ同水準にとどまっていたが、新型コロナウイルスの感染者数が低水準で推移していることを反映し、11月に入ってから前年の水準を明確に上回っている[図表5]。

     

    [図表5]小売・娯楽施設の人出
    [図表5]小売・娯楽施設の人出

     

    2021年10月以降の消費関連指標は、緊急事態宣言の解除を受けて、これまで低迷が続いてきた旅行、宿泊などの対面型サービスを中心に個人消費が急回復していることを示している。

     

    日本銀行の「消費活動指数」によれば、2021年10月の実質消費活動指数(旅行収支調整済)は前月比4.3%の増加となり、特に人出との連動性が高いサービス消費が同8.0%の高い伸びとなった。11月の人出が10月よりも明確に増えていることを踏まえると、11月のサービス消費はさらに水準を切り上げる可能性が高い。

     

    また、総務省統計局の「家計調査」によれば、対面型サービス消費(一般外食、交通、宿泊料、パック旅行費、入場・観覧・ゲーム代)は、2020年秋頃にいったんコロナ前の8割程度の水準まで回復した後、2021年入り後は緊急事態宣言の再発令を受けて5割前後の水準に落ち込んでいたが、2021年10月は緊急事態宣言の解除を受けて前月比47.4%と急回復し、2020年秋頃の水準に戻った[図表6][図表7]。

     

    [図表6]小売・娯楽施設の人出とサービス消費 [図表7]対面型サービス消費は緊急事態宣言解除後に急回復
    [図表6]小売・娯楽施設の人出とサービス消費
    [図表7]対面型サービス消費は緊急事態宣言解除後に急回復

     

    自動車販売台数と自動車生産の推移夏場の景気を大きく下押しした供給制約も和らぎつつある。自動車生産は、半導体不足や東南アジアからの部品調達難の影響で、2021年7月から9月までの3ヵ月で40%以上減少し、このことが自動車販売の急速な落ち込みにつながっていた。

     

    しかし、10月の自動車生産は前月比15.4%と4ヵ月ぶりの増加となり、自動車を含む輸送機械の予測指数は11月が前月比35.8%、12月が同5.2%の大幅増産計画となっている。

     

    また、自動車販売は9月に前月比▲32.0%(ニッセイ基礎研究所による季節調整値)と大きく減少した後、10月が同13.3%、11月が同23.8%の増加となり、9月の落ち込みの8割以上を取り戻した。供給制約に伴う自動車生産の落ち込みには歯止めがかかっており、先行きは挽回生産とそれに伴う販売増が期待できるだろう[図表8]。

     

    [図表8]自動車販売台数と自動車生産の推移
    [図表8]自動車販売台数と自動車生産の推移

     

    2021年10~12月期は前期比年率8.3%の高成長になると予想する。緊急事態宣言の解除を受けて外食、旅行などの対面型サービス消費が回復し、民間消費が前期比2.8%の高い伸びとなることが高成長の主因となる。7~9月期に減少した設備投資も、企業収益の改善を背景に基調としては持ち直しの動きが続いており、10~12月期は増加に転じる可能性が高い。

     

    この結果、2021年10~12月期の実質GDPはコロナ前(2019年10~12月期)の水準を上回ることが予想される。ただし、2019年10~12月期は消費税率引き上げの影響で前期比年率▲9.2%の大幅マイナス成長となっており、新型コロナウイルス感染症の影響が顕在化する前に平常時よりも経済活動の水準が落ち込んでいた。

     

    コロナ前(2019年10~12月期)の実質GDPは直近のピーク(2019年4~6月期)より▲2.5%も低い。実質GDPがコロナ前の水準を回復したとしても経済正常化が実現したとはいえない[図表9]。

     

    [図表9]実質GDPが元の水準に戻る時期
    [図表9]実質GDPが元の水準に戻る時期

     

    先行きの日本経済はこれまでと同様に、新型コロナウイルスの感染動向とそれに対応する公衆衛生上の措置によって大きく左右される展開が続くだろう。現在、日本では感染状況が非常に落ち着いた状態が維持されているが、世界的にはいったん落ち着いた感染者数が再び増加している国が散見される。

     

    日本でも、オミクロン株の流行などによって、今後感染者数が増加に転じる可能性は否定できず、その際に緊急事態宣言などの行動制限の強化に踏み切れば、対面型サービス消費を中心に経済活動が再び落ち込むリスクがある。一方、医療体制の拡充や医療資源の適正な配分などを十分に進めておけば、感染者数が一定程度増加しても経済活動を制限する必要性は低下し、景気が大きく上振れる可能性がある。

     

    現時点では、実質GDPの水準がコロナ前(2019年10~12月期)を上回るのは2021年10~12月期、直近のピーク(2019年4~6月期)に戻るのは2023年4~6月期と予想している。

     

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    本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
    本記事は、ニッセイ基礎研究所が2021年12月8日に公開したレポートを転載したものです。

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