(※写真はイメージです/PIXTA)

賃借人から了承を得ずに修理日を変更し、部屋に立ち入りクーラーを修理。この場合プライバシーの侵害は認められるのでしょうか。賃貸・不動産問題の知識と実務経験を備えた弁護士の北村亮典氏が、実際の裁判例をもとに解説します。

「性別」は本事例の判決において重要な要素のひとつ

「賃借人は,平成17年8月14日に,賃貸人に対し,本件建物備付けのクーラーの修理を頼む際に,「19日はできるだけ,部屋にいるようにします。仕事の都合上無理だったら仕方がないので,入っていただいても大丈夫なように片付けておきます。」と言ったと認められる。」

 

「そして,賃借人の上記の発言は,同月19日については,賃借人の立会いなしでの立入りを承諾したものと認められる。しかし,上記の承諾は,「19日」と日付を特定しているほか,「入っていただいても大丈夫なように片付けておきます。」という言葉からも,他の日に入られるのは困るという賃借人の意図を十分に読みとることができるものである。」

 

「したがって,上記の承諾は,同月19日についてなされたもので,同月18日についても,賃借人の立会いなしでの立入りを承諾したものと認めることはできない。」

 

上記のように、立ち入りの承諾が認められないと認定した上で、

 

現代社会においてプライバシー権の重要性が一般に認知されていること,賃借人が女性であること及び賃貸人は携帯電話等によって賃借人に対して連絡をとることが可能な状況にあったこと等に鑑みると,賃貸人が同日,賃借人に連絡をとることなく立ち入ったことは,明らかに賃借人に対する配慮に欠けた行為であり,立入りについて賃借人の承諾を得るべきことを定めた本件賃貸借契約条項に反する債務不履行に当たるとともに,故意とはいえないとしても,過失による権利侵害行為と認められ,不法行為にも該当する。」

 

と述べました。

 

なお、慰謝料の額については,賃借人は10万円を請求していましたが、判決では、

 

「賃借人のプライバシー侵害の程度,賃借人が女性であることなど本件の諸事情を斟酌すると,3万円が相当である。」

 

と判断されています。

 

本件は、賃借人が女性であったことが、違法と判断したひとつの要素となっており、これが仮に単身男性だった場合はどうだったのか、という点で若干疑問はありますが、いずれにしても、賃貸人としては、争いを避けるためには、貸室に立ち入る際の承諾は「確実かつ正確に」得ておく必要があると言えます。

 

この記事は2020年5月20日時点の情報に基づいて書かれています(2021年12月16日再監修済)。

 

 

北村 亮典

弁護士

こすぎ法律事務所

 

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※本記事は、北村亮典氏監修のHP「賃貸・不動産法律問題サポート弁護士相談室」掲載の記事・コラムを転載し、再作成したものです。

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