飯田屋でもっとも売れているおろし金は「楽楽おろしてみま専科 極み」。

「売れない商品」は本当にあるでしょうか。商品が売れずに廃業寸前まで追い込まれた経験を持つ飯田屋6代目店主は、「ない」と答えます。「売れない商品」なのではなく、「売れない売場」があるのだと語ります。※本連載は飯田結太氏の著書『浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟』(プレジデント社)を抜粋し、再編集したものです。

安売りされた商品の価値は下がっていく

■値切って当然のまちで正札販売を貫く

 

飯田屋では、棚に付いた価格以外で販売しません。

 

「かっぱ橋に店があるのに、なぜ値下げしないのか」と、お客様からクレームをいただくこともありました。それでも、安易な安売りにはまったく興味はありません。

 

今ではそう言える僕も、売上が思うように上がらないときは、こっそり値下げをすべきかと何度も悩みました。それでも、「一度でも値下げに手を出してしまえばやめられなくなる」と昔の失敗を思い出し、やせ我慢をしてきました。

 

値下げは麻薬のようなものです。

 

このころはまだ、飯田屋として進むべき方向性がしっかり共有できずにいました。

 

ある社員は、飯田屋を「問屋」と捉え、プロの料理人たちへの卸販売価格と一般のお客様への小売価格の二つを設定すべきと主張しました。「プロには安く販売すべき」という意見は、問屋街で長年戦い抜いてきた経験ゆえのもっともなものです。

 

別の社員は「ディスカウントストア」と捉え、値引き交渉に応じて価格を変動させるべきと主張しました。「とにかく1円でも安く販売しよう」という考えです。

 

そして僕はというと、飯田屋を「専門店」と捉え、お客様によって価格を変えずに店頭価格だけで勝負する「正札販売」を貫くという考えでした。

 

どこよりも安い店を目指していたころ、あるメーカーから言われたことがあります。

 

「価格を下げられてしまうと、商品の価値も下がってしまう。メーカー希望小売価格を守ってもらうわけにはいかないだろうか?」

 

初めは、その真意を僕は理解できませんでした。

 

しかし、安売りによって商品が廃番になり、世の中から次々と消えていくのを目の当たりにしました。商品が安いほどに「失敗しても、また買えばいい」と安易に購入してしまい、お客様と道具の不幸な出合いが生まれていたのです。

 

安売りとは、店の商品説明を必要とせず、短時間で効率的に売るための手段です。その代償として、安売りされた商品の価値をあっという間に下げてしまいます。

 

「メーカー希望小売価格を守ってほしい」と意見をしたメーカーは、商品を少しずつでも着実に育てていきたいと願っています。僕もそんなふうに商品を育てられる小売店になりたいと思います。

 

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浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟

浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟

飯田 結太

プレジデント社

効率度外視の「売らない」経営が廃業寸前の老舗を人気店に変えた。 ノルマなし。売上目標なし。営業方針はまさかの「売るな」──型破りの経営で店舗の売上は急拡大、ECサイトもアマゾンをしのぐ販売数を達成。 廃業の危機に…

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