人間が骨折した場合と同じように、ペットの骨折も患部を固定し、安静にすることで骨がくっつきます。しかし、動物はギプスで骨を固定することができないため、骨がなかなかくっつかず、最悪の場合骨が溶けてしまうこともあります。獣医師として数々の動物の命と向き合ってきた中村泰治氏が、ペットが骨折してしまった際の治療法を解説します。

骨折部位を金属板で強力に固定する「プレート固定法」

骨折の手術で広く取り入れられているのは「プレート固定法」などと呼ばれる、骨折部位の固定法です。骨折した部分を切り開き、ステンレス製やチタン製などの素材のプレートと、スクリューと呼ばれるネジのような医療器具を使って、骨折した骨を固定します。近年ではロッキングシステムというプレートなども発売され、その選択肢は以前より増えてより良いインプラントが使用可能です。

 

プレート固定法は、動物の骨折で広く用いられている治療法です。

 

メリットとしては、骨折した骨を正確に元の位置に戻して固定することが可能であるほか、外見上も皮膚の上などに治療用の機器が露出することがない点です。手術の後に安静にして管理する必要があまりないため、状態によっては手術の翌日から歩くことができるケースもあります。

 

一方でデメリットとしては、体に大きくメスを入れて手術をするため、どうしても体への負担は避けることができません。また、プレートの固定が悪かったり、激しい動きや力によって、プレートが折れたり、スクリューが外れたりすることもあります。

 

骨折した初期にこの方法で手術をすれば、非常に強力かつ安定的に固定できるため、高い治療効果が期待できます。

 

手術の方法はいくつかありますが、当院では前足に関しては2枚のプレートで固定する方法を採用しています。これは、正面と外側から2枚のプレートで折れてしまった骨を支える手術方法です。

 

1回目の手術で2枚のプレートを挿入して2方向から骨を固定し、1カ月ほど経った頃に1枚だけを取り外します。なぜ1枚だけ取り外すかというと、長期間2枚のプレートで支えていると、骨が怠けてきて細くなってしまい、骨の健全な治癒につながらないからです。

 

少し回復してきたところで1枚だけ取り外すことで、まだ完全には治っていない骨を支えることもできますし、2枚で支えていたときよりは骨に負荷がかかるため、骨自身が怠けることなく太く、強くなる作用も期待できます。1枚抜いて力を弱めることをディスタビライゼーションといいます。

 

そして、完全に治ってきた頃に、必要に応じて2枚目を取り外します。2枚目についてはそのまま体内に残しておくケースも少なくありません。1枚だけのプレートであれば骨には影響がほとんどありませんし、再骨折するリスクを軽減できます。

 

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次ページ開放骨折など、重度の骨折に使用される「創外固定法」

※本連載は、中村 泰治氏の著書『もしものためのペット専門医療』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

もしものためのペット専門医療

もしものためのペット専門医療

中村 泰治

幻冬舎メディアコンサルティング

飼い主のペットに対する健康志向が高まるにつれて、動物医療に対して求められることは多様化し、専門的な知識が必要とされてきています。 動物病院は多くの場合、1人の医師が全身すべての病気を診る「1人総合病院」状態が一…

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